X線作業主任者の過去問の解説:管理(2016年10月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:管理(2016年10月)

ここでは、2016年(平成28年)10月公表の過去問のうち「エックス線の管理に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2016年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2016年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2016年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2016年10月)



問1 エックス線管及びエックス線の発生に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)エックス線管の内部は、効率的にエックス線を発生させるため、高度の真空になっている。
(2)陰極で発生する熱電子の数は、フィラメント電流を変えることで制御される。
(3)陽極のターゲットはエックス線管の軸に対して斜めになっており、加速された熱電子が衝突しエックス線が発生する領域である実焦点よりも、これをエックス線束の利用方向から見た実効焦点の方が大きくなる。
(4)連続エックス線の発生効率は、ターゲット元素の原子番号と管電圧の積に比例する。
(5)管電圧がターゲット元素に固有の励起電圧を超える場合、発生するエックス線は、制動放射による連続エックス線と特性エックス線が混在したものになる。


答え(3)
(3)は誤り。実焦点と実効焦点は、どちらもターゲット上の範囲のことです。
見る方向によって、それぞれの焦点の呼び方が異なります。
ターゲットはエックス線管の軸に対して斜めにカットされているため、実焦点と実効焦点を比べた場合、実効焦点の方が小さくなります。
(1)(2)(4)(5)は正しい。



問2 エックス線に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)エックス線は、間接電離放射線である。
(2)制動エックス線は、軌道電子が、エネルギー準位の高い軌道から低い軌道へと転移するときに発生する。
(3)制動エックス線のエネルギー分布は、連統スペクトルを示す。
(4)特性エックス線は、ターゲットの元素に特有な波長をもつ。
(5)K系列の特性エックス線は、管電圧を上げると強度が増大するが、その波長は変わらない。


答え(2)
(2)は誤り。軌道電子が、エネルギー準位の高い軌道から低い軌道へと転移するときに発生するのは、特性エックス線です。
制動エックス線ではありません。
(1)(3)(4)(5)は正しい。



問3 エックス線と物質の相互作用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)コンプトン効果により散乱するエックス線の波長は、入射エックス線の波長より短く、散乱角は、0~90°の間に分布する。
(2)レイリー散乱は、エックス線が原子と弾性的に衝突して運動の向きを変える現象であり、散乱エックス線の波長は入射エックス線の波長より長くなる。
(3)光電効果により原子から放出される電子を反跳電子という。
(4)光電効果により原子から放出される電子の運動エネルギーは、入射エックス線のエネルギーに等しい。
(5)電子対生成は、入射エックス線のエネルギーが、電子2個の静止質量に相当するエネルギー以上であるときに生じる。


答え(5)
(1)は誤り。コンプトン効果により散乱するエックス線の波長は、入射エックス線の波長より長くなります。また、散乱角は、0~180°の間に分布します。
(2)は誤り。レイリー散乱では、エックス線が原子と衝突したとき、その前後でエックス線のエネルギーは変わらず、方向だけが変わります。したがって、散乱エックス線の波長は、入射エックス線の波長と同じ長さになります。
(3)は誤り。反跳電子は、コンプトン効果により原子から放出される電子のことです。光電効果では、光電子が放出されます。
(4)は誤り。光電効果により原子から放出される電子の運動エネルギーは、入射エックス線のエネルギーよりも小さくなります。
(5)は正しい。電子対生成は、1.02 MeV以上のエネルギーの入射エックス線のときに起こります。



問4 エックス線の利用に関する次のAからDまでの記述について、正しいもののすべての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 被検査物体にエックス線を照射し、通過線の強度の違いから内部の構造を調べる手法をラジオグラフィ(透過撮影法)という。
B 空港の手荷物検査装置は、被検査物体にエックス線を照射した結果発生する特性エックス線のエネルギーを分析することにより、手荷物の検査を行う装置である。
C 後方散乱線を利用する検査方法では、エックス線フィルム(又はエックス線検出器)を、被検査物体の裏側ではなく、エックス線源と同じ側に配置して検査を行う。
D 溶接による残留応力など金属にひずみがあると格子間隔が正常値からずれるので、エックス線の回折を利用して、ひずみの度合いを測定することができる。

(1)A,B,C
(2)A,C,D
(3)A,D
(4)B,C
(5)C,D


答え(2)
Aは正しい。ラジオグラフィでは、密度の大きい物質はエックス線を吸収しやすく、反対に密度の小さい物質はエックス線を透過しやすいという性質を利用します。
Bは誤り。空港の手荷物検査装置は、ラジオグラフィを利用した機器の一種で、荷物にエックス線を照射してその透過像を調べることで、荷物の中にピストルなどの危険物が無いか検査します。
Cは正しい。散乱を利用したエックス線厚さ計は、被検査物体から発生する後方散乱線の量を調べることで、その厚みを検査することができます。
Dは正しい。エックス線の回折は、レイリー散乱で起こる散乱エックス線同士が干渉する現象のことです。ある時にはエックス線の強度が大きくなり、またある時には強度が小さくなるという性質を利用して、ひずみの度合いを測定します。



問5 図Ⅰのように、検査鋼板に垂直に細い線束のエックス線を照射し、エックス線管の焦点から5 mの位置で、透過したエックス線の1 cm線量当量率を測定したところ、8 mSv/hであった。
次に図Ⅱのように、この線束を厚さ20 mmの鋼板で遮へいし、同じ位置で1 cm線量当量率を測定したところ1 mSv/hとなった。
この遮へい鋼板を厚いものに替えて、同じ位置における1 cm線量当量率を0.5 mSv/h以下とするために必要な遮へい鋼板の最小の厚さは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、エックス線の実効エネルギーは変わらないものとする。また、散乱線の影響は無いものとする。
なお、loge2=0.69とする。

問5図

(1)21 mm
(2)23 mm
(3)25 mm
(4)27 mm
(5)30 mm


答え(4)
ここでは対数loge2=0.69を使わない計算方法で見ていきましょう。

まず、鋼板の半価層hがわからないので、指数関数減弱の式 I = I0(1/2)x/hを使って求めます。
問題文より、「検査鋼板を透過したエックス線の1 cm線量当量率は8 mSv/h」であったが、「厚さ20 mmの鋼板で遮へいし、測定したところ1 mSv/hとなった」ことがわかります。
これらの数値を代入すると次のようになります。

1 [mSv/h] = 8 [mSv/h] (1/2)20 [mm] / h [mm]
1 [mSv/h] / 8 [mSv/h] = (1/2)20 [mm] / h [mm]
(1/2) × (1/2) × (1/2) = (1/2)20 [mm] / h [mm]
(1/2)3 = (1/2)20 [mm] / h [mm]

左辺と右辺は、(1/2)の部分が同じなので、指数の部分にも同じ数字が入ります。
指数の部分を抜き出して計算すると、次のようになります。

3 = 20 [mm] / h [mm]
h ≒ 6.7

つまり、鋼板の半価層hは6.7 mmです。
続いて、「遮へい鋼板を厚いものに替えて、同じ位置における1 cm線量当量率を0.5 mSv/h以下とするために必要な遮へい鋼板の最小の厚さx」を、指数関数減弱の式を使って求めます。

0.5 [mSv/h] = 8 [mSv/h] (1/2) x [mm] / 6.7 [mm]
0.5 [mSv/h] / 8 [mSv/h] = (1/2) x [mm] / 6.7 [mm]
(1/2) [mSv/h] / 8 [mSv/h] = (1/2) x [mm] / 6.7 [mm]
(1/16) [mSv/h] = (1/2) x [mm] / 6.7 [mm]
(1/2) × (1/2) × (1/2) × (1/2) = (1/2) x [mm] / 6.7 [mm]
(1/2) 4=(1/2) x [mm] / 6.7 [mm]

左辺と右辺は、(1/2)の部分が同じなので、指数の部分にも同じ数字が入ります。
指数の部分を抜き出して計算すると、次のようになります。

4 = x [mm] / 6.7 [mm]
4 × 6.7 [mm] = x [mm]
x [mm] = 4 × 6.7 [mm]
x [mm] ≒ 27 [mm]

つまり、厚さ27 mm以上の遮へい鋼板を使えば、透過後の1 cm線量当量率を0.5 mSv/h以下にすることができます。
よって、(4)27 mmが正解だとわかります。



問6 単一エネルギーの細いエックス線束が物体を透過するときの減弱に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)エネルギーが1 MeV程度までのエックス線に対する鉄の半価層の値は、エックス線のエネルギーが高くなるほど大きくなる。
(2)半価層の値は、エックス線の線量率が高くなっても変化しない。
(3)半価層h(cm)と強弱係数μ(cm-1)との間には、μh=loge2の関係がある。
(4)軟エックス線の場合は、硬エックス線の場合より、半価層の値が小さい。
(5)1/10価層H(cm)と半価層h(cm)との間には、H=(loge2/loge10)hの関係がある。


答え(5)
(1)は正しい。半価層とは、エックス線の線量率(強度)が半分になるまでの物体の厚さのことです。エックス線のエネルギーが高くなると、エックス線は物体を透過しやすくなります。したがって、線量率を半分にするには、もっと分厚くしないといけませんので半価層の値は大きくなります。
(2)は正しい。半価層は、線量率には影響を受けず、「エックス線のエネルギー」と「物体の種類」に依存します。
(3)は正しい。「log」は対数ですが、対数が分らなくても、μh=loge2という関係式は必ず覚えておきましょう。
(4)は正しい。エネルギーの小さいエックス線のことを軟エックス線、エネルギーの大きいエックス線のことを硬エックス線と言います。エネルギーの小さいエックス線である軟エックス線は、硬エックス線より半価層の値が小さくなります。
(5)は誤り。H=(loge2/loge10)hではなく、正しくはH=(loge10/loge2)hとなります。
対数が分らない人も、まずはこの式の形を覚えましょう。
1/10価層Hと減弱係数μとの間には、μH=loge10の関係があります。
また、半価層hと強弱係数μとの間には、μh=loge2の関係があります。
それぞれの関係式には減弱係数μがあるので、代入して計算することができます。
μh=loge2を変形するとμ=loge2/hになりますので、μH=loge10に代入しましょう。

(loge2/h)H=loge10
H=(loge10/loge2)h

1/10価層H(cm)と半価層h(cm)との間には、H=(loge10/loge2)hの関係があることがわかります。



問7 工業用の一体形エックス線装置に関する次の文中の[  ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。

「工業用の一体形エックス線装置は、[ A ]とエックス線管を一体としたエックス線発生器と、[ B ]との間を[ C ]ケーブルで接続する構造の装置である。」

(1)A=高電圧発生器 B=制御器    C=低電圧
(2)A=管電圧調整器 B=制御器    C=高電圧
(3)A=高電圧発生器 B=管電圧調整器 C=高電圧
(4)A=管電流調整器 B=管電圧調整器 C=低電圧
(5)A=管電圧調整器 B=管電流調整器 C=高電圧


答え(1)
今回は「一体型エックス線装置」の構造について出題されましたが、「分離型エックス線装置」について出題されることもあります。
分離型エックス線装置では、高電圧発生器とエックス線管の間に高電圧ケーブルを用います。



問8 連続エックス線が物体を透過する場合の減弱に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)連続エックス線が物体を透過すると、実効エネルギーは物体の厚さの増加に伴い低くなる。
(2)連続エックス線が物体を透過すると、全強度は低下し、特に低エネルギー成分の減弱が大きい。
(3)連続エックス線が物体を透過すると、最高強度を示すエックス線エネルギーは、高い方へ移動する。
(4)連続エックス線の実効エネルギーが高くなると、平均減弱係数は小さくなる。
(5)連続エックス線が物体を透過するとき、透過エックス線の全強度が物体に入射する直前の全強度の1/2になる物体の厚さをHaとし、直前の全強度の1/4になる物体の厚さをHbとすれば、HbはHaの2倍よりも大きい。


答え(1)
(1)は誤り。連続エックス線には、低エネルギーから高エネルギーのエックス線が混じり合っています。
低エネルギーのエックス線は、物体透過時にたくさん吸収されます。
当然、物体の厚さが増せば、低エネルギーのエックス線が吸収される割合は大きくなります。
そうすると、比較的高エネルギーのエックス線が残ることになり、物体の厚さの増加に伴い実効エネルギーが高くなります。
(2)(3)(4)(5)は正しい。



問9 管理区域を設定するための外部放射線の測定に関する次の文中の[  ]内に入れるAからCの語句又は数値の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。

「測定点の高さは、作業床面上約[ A ]mの位置とし、あらかじめ計算により求めた[ B ]の低い箇所から逐次高い箇所へと測定していく。
測定前に、バックグラウンド値を調査しておき、これを測定値[ C ]値を測定結果とする。」

(1)A=1   B=1 cm線量当量           C=に加算した
(2)A=1.5  B=1 cm線量当量率          C=から差し引いた
(3)A=1   B=1 cm線量当量又は70 μm線量当量  C=から差し引いた
(4)A=1.5  B=1 cm線量当量率又は70 μm線量当量 C=に加算した
(5)A=1   B=1 cm線量当量又は1 cm線量当量率 C=から差し引いた


答え(5)
測定点の高さは、作業床面上約1 m(人が立った状態でお腹くらい)と覚えましょう。
管理区域を設定するための外部放射線の測定は、1 cm線量当量又は1 cm線量当量率で行います。
バックグラウンド値は、自然放射線などの本来測定したい線量以外の線量で、測定値から差し引くと真の値を知ることができます。



問10 下図のように、エックス線装置を用いて鋼板の透過写真撮影を行うとき、エックス線管の焦点から3 mの距離のP点における写真撮影中の1 cm線量当量率は0.2 mSv/hである。
露出時間が1枚につき110秒の写真を週400枚撮影するとき、エックス線管の焦点とP点を通る直線上で焦点からP点の方向にあるQ点が管理区域の境界線の外側にあるようにしたい。
焦点からQ点までの距離として、最も短いものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、3か月は13週とする。

問10図

(1)10 m
(2)12 m
(3)15 m
(4)20 m
(5)25 m


答え(3)
管理区域とは、「エックス線による実効線量が3月間につき1.3 mSvを超えるおそれのある区域」をいいます。
ここでは、エックス線管の焦点から管理区域の境界までの距離を、a mとします。

まず、「P点における写真撮影中の1 cm線量当量率は0.2 mSv/h」ですが、これを「管理区域の境界の線量率1.3 mSv/3月」と単位を合わせます。
単位を合わせれば、距離の逆二乗則を使い、「エックス線管の焦点から管理区域の境界の距離」を計算することができます。

まず、「写真撮影の露出時間が1枚につき110秒」なので、これを時間単位に直すと次のようになります。

110 [s/枚] / 3600 [s/h] ≒ 0.03 [h/枚]

次に、写真1枚あたりの1 cm線量当量を計算します。
P点の1 cm線量当量率0.2 mSv/hに、先ほど求めた「写真撮影の露出時間1枚につき0.03時間」を掛けると次のようになります。

0.2 [mSv/h] × 0.03 [h/枚] = 0.006 [mSv/枚]

続いて、P点における1週間あたりの1 cm線量当量率を計算します。
写真を週に400枚撮影するので、これと先ほど求めた「写真1枚あたりの1 cm線量当量0.006 mSv/枚」を掛けると次のようになります。

0.006 [mSv/枚] × 400 [枚/週] = 2.4 [mSv/週]

最後に、P点における3か月あたりの1 cm線量当量率を計算します。
問題文の最後より、「3か月は13週」なので、先ほど求めた「1週間あたりの1 cm線量当量率2.4 mSv/週」を掛けると次のようになります。

2.4 [mSv/週] × 13 [週/3月] = 31.2 [mSv/3月]

それでは、距離の逆二乗則を使って、エックス線管焦点から管理区域の境界までの距離aを求めましょう。
「距離の逆二乗則」は、強度が距離の2乗に反比例して減少する法則なので、次のような計算式で表されます。

強度A/強度B = 距離b2/距離a2

この式にそれぞれの強度と距離を代入すると、次のようになります。

1.3 [mSv/3月] / 31.2 [mSv/3月] = 32 [m] / a2 [m]
a2 [m] × 1.3 [mSv/3月] / 31.2 [mSv/3月] = 32 [m]
a2 [m] = 32 [m] × 31.2 [mSv/3月] / 1.3 [mSv/3月]
a2 [m] = 9 [m] × 31.2 [mSv/3月] / 1.3 [mSv/3月]
a2 [m] = 216 [m]
a [m] ≒ 14.7 [m]

つまり、エックス線管焦点から管理区域の境界までの距離aは、14.7 mです。
問題文では「Q点が管理区域の境界線の外側にあるようにしたく、焦点からQ点までの距離として、最も短いもの」となっているので、(3)15 mが正解です。


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