X線作業主任者の過去問の解説:測定(2025年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:測定(2025年4月)

ここでは、2025年(令和7年)4月公表の過去問のうち「エックス線の測定に関する知識(問21~問30)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2025年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2025年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2025年4月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:生体(2025年4月)



問21 放射線の量とその単位に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)吸収線量は、電離放射線の照射により、単位質量の物質に付与されたエネルギーをいい、単位としてGyが用いられる。
(2)カーマは、電離放射線の照射により、単位質量の物質中に生成された荷電粒子の電荷の総和であり、単位としてGyが用いられる。
(3)等価線量は、人体の特定の組織・臓器当たりの吸収線量に、放射線の種類とエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたもので、単位としてSvが用いられる。
(4)実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に、各組織・臓器の相対的な放射線感受性を示す組織加重係数を乗じ、これらを合計したもので、単位としてSvが用いられる。
(5)eV(電子ボルト)は、放射線のエネルギーの単位として用いられ、1eVは約1.6×10-19Jに相当する。


答え(2)
(1)は正しい。吸収線量の単位はGyが用いられます。
(2)は誤り。カーマは、放射線が物質中に生成した全荷電粒子の初期運動エネルギーの総和で、単位はGyが用いられます。電荷の総和ではありません。
(3)は正しい。等価線量は、「吸収線量×放射線加重係数」です。単位はSvです。
(4)は正しい。実効線量は、「等価線量×組織加重係数の総和」です。単位はSvです。
(5)は正しい。eVは、放射線エネルギーの単位で、1eV≒1.6×10-19Jです。



問22 気体の電離を利用する放射線検出器の印加電圧と生じる電離電流の特性に対応した次のAからDの領域について、気体(ガス)増幅が生じ、検出器として利用されるものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 再結合領域
B 電離箱領域
C 比例計数管領域
D GM計数管領域

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(5)
下の図は印加電圧(検出器に加える電圧)と検出器で発生する電子・イオン対の発生量を表したものです。
印加電圧と電子・イオン対の発生量に応じた特徴的な領域ごとに分類された名称があり、検出器は適切な印加電圧の範囲で使用します。

問22解説図

A 再結合領域では、電子・イオン対が再結合して電流にならないため、検出器に適していません。
B 電離箱領域では、気体増幅が起こりません。
C 比例計数管領域では、電離による一次電子が加速され気体増幅が起こります。
D GM計数管領域では、気体増幅がきわめて大きくなり、1つの放射線に対し大きな出力が得られます。

つまり、気体増幅を利用している領域は、比例計数管領域GM計数管領域です。



問23 放射線検出器とそれに関係の深い用語との組合せとして、正しいものは次のうちどれか。

(1)比例計数管 ……………………… 窒息現象
(2)フリッケ線量計 ………………… 充電
(3)GM計数管 ……………………… グロー曲線
(4)シンチレーション検出器 ……… 空乏層
(5)半導体検出器 …………………… 固体電離箱


答え(5)
(1)は誤り。比例計数管と関係の深い事項に、気体増幅(ガス増幅)、電子なだれなどがあります。また、窒息現象は、GM計数管と関係の深い事項です。
(2)は誤り。フリッケ線量計と関係の深い事項に、G値があります。また、充電は、電離箱式PD型ポケット線量計と関係の深い事項です。
(3)は誤り。GM計数管と関係の深い事項に、気体増幅(ガス増幅)、電子なだれなどがあります。また、グロー曲線は、熱ルミネセンス線量計と関係の深い事項です。
(4)は誤り。シンチレーション検出器と関係の深い事項に、光電子増倍管、蛍光作用などがあります。また、空乏層は、半導体検出器と関係の深い事項です。
(5)は正しい。



問24 GM計数管に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)GM計数管では、入射する放射線が非常に多くなると、弁別レベル以下の放電が連続し、出力パルスが得られなくなる現象が起こる。
(2)GM計数管の電離気体としては、通常、アルゴンなどの貴ガス(希ガス)が用いられる。
(3)GM計数管には、放射線によって生じる放電を短時間で消滅させるため、消滅ガスとして、少量のアルコール又はハロゲンガスが混入される。
(4)出力されたパルス波高は、入射放射線のエネルギーに比例する。
(5)GM計数管には、放射線が入射してもパルス信号が検出できない時間があり、これを不感時間という。


答え(4)
(1)は正しい。過負荷で弁別レベル以下の信号しか出なくなり、カウント不能となります。
(2)は正しい。GM計数管の電離気体としては、アルゴン等の希ガスが一般的です。
(3)は正しい。GM計数管の消滅ガス(クエンチングガス)として、アルコールやハロゲンを添加しています。
(4)は誤り。GM計数管では、出力パルスの大きさはエネルギーに比例しません
(5)は正しい。不感時間(Dead time)が存在し、その間は応答しません。



問25 サーベイメータに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータは、入射エックス線のエネルギー分析における分解能が半導体式サーベイメータに比べて優れている。
(2)NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータは、後方からのエックス線に対して検出効率が低い。
(3)NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータは、30keV程度のエネルギーのエックス線の測定には適していない。
(4)電離箱式サーベイメータは、エネルギー依存性及び方向依存性が小さいので、散乱線の多い区域の測定に適している。
(5)半導体式サーベイメータは、20keV程度のエネルギーのエックス線の測定には適していない。


答え(1)
(1)は誤り。半導体式の方が、エネルギー分解能は高いです。NaI(Tl)シンチレーション式は、感度は高いですが、半導体式に比べてエネルギー分解能は低いです。
(2)は正しい。NaI(Tl)シンチレーション式は、放射線の入射方向による感度差があります。
(3)は正しい。NaI(Tl)シンチレーション式は、30keVのエネルギーのエックス線測定では検出効率が低く、適していません。
(4)は正しい。電離箱式は、放射線の入射方向や異なるエネルギーの放射線に対して安定した検出ができます。
(5)は正しい。半導体式は、低エネルギー放射線の検出に限界があります。



問26 被ばく線量を測定するための放射線測定器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)熱ルミネセンス線量計(TLD)は、放射線照射後、素子を加熱することによって発する蛍光の強度から線量を読み取る線量計で、線量を読み取ると素子から情報が消失してしまうので、再読み取りができない。
(2)電離箱式PD型ポケット線量計は、充電により先端がY字状に開いた石英繊維が放射線の入射により閉じてくることを利用した線量計である。
(3)光刺激ルミネセンス(OSL)線量計は、輝尽性蛍光を利用した線量計で、素子には炭素添加酸化アルミニウムなどが用いられている。
(4)蛍光ガラス線量計は、放射線により生成された蛍光中心に緑色のレーザー光を当て、発生する蛍光を測定することにより、線量を読み取る。
(5)電荷蓄積式(DIS)線量計は、不揮発性メモリ素子(MOSFETトランジスタ)を電離箱の構成要素の一部とした線量計である。


答え(4)
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。蛍光ガラス線量計は、紫外線照射により線量を読み取ります。緑色のレーザー光は、誤りです。



問27 放射線の測定などについての用語に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)半導体検出器において、放射線が半導体中で1個の電子・正孔対を作るのに必要な平均エネルギーをε値といい、シリコン結晶の場合は、約3.6eVである。
(2)気体に放射線を照射したとき、1個のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値といい、気体の種類にあまり依存せず、放射線のエネルギーに応じてほぼ一定の値をとる。
(3)線量率計の積分回路の時定数は、線量率計の指示の即応性に関係した定数で、時定数の値を小さくすると、指示値の相対標準偏差は小さくなるが、応答速度は遅くなる。
(4)入射放射線の線量率が低く、測定器の検出限界に達しないことにより計測されないことを数え落としという。
(5)放射線測定器の指針が安定せず、ゆらぐ現象をフェーディングという。


答え(1)
(1)は正しい。
(2)は誤り。W値は気体の種類に依存しますが、放射線エネルギーにはあまり依存しません。
(3)は誤り。時定数を小さくすると応答は速くなり、相対標準偏差が大きくなります。
(4)は誤り。数え落としは、線量率が高すぎて、計測が追いつかない時に発生します。
(5)は誤り。フェーディングとは、線量の記録が時間経過とともに減衰することです。



問28 GM計数管式サーベイメータにより放射線を測定し、1,500cpsの計数率を得た。
GM計数管の分解時間が100μsであるとき、真の計数率(cps)に最も近い値は次のうちどれか。

(1)1,300
(2)1,450
(3)1,550
(4)1,650
(5)1,750


答え(5)
GM計数管式サーベイメータを用いて測定を行うと、分解時間内に数え落しが起こり、真の計数率(本当の計数率)と異なる値を示します。
真の計数率を求める公式は次の通りです。

M=m/(1-mt)

Mは真の計数率を、mは実測の計数率を、tは分解時間を表します。
それでは、問題文の数値を公式に代入して、計算していきましょう。

分解時間の100μsを、秒に直すと0.0001sです。

M=1,500[cps]/(1-1,500[cps]×0.0001[s])≒1,765[cps]

真の計数率は、約1,765cpsだとわかりました。
選択肢の中で最も近い値、(5)1,750が正解です。



問29 ある放射線測定器を用いてt秒間放射線を測定し、計数値Nを得たとき、計数率の標準偏差(cps)を表すものは、次のうちどれか。

問29選択肢


答え(2)
標準偏差とは、バラツキを表す指標の一つです。
放射線測定において標準偏差は、計数値Nの平方根で求められます。

標準偏差=√N

今回求めたい計数率(cps)の標準偏差は、√Nを、測定時間tで割れば求められます。
したがって、答えは(2)になります。



問30 男性の放射線業務従事者が、エックス線装置を用い、肩から大腿(たい)部までを覆う防護衣を着用して放射線業務を行った。
労働安全衛生関係法令に基づき、胸部(防護衣の下)及び頭・頸(けい)部の2か所に放射線測定器を装着して、被ばく線量を測定した結果は、下の表のとおりであった。
この業務に従事した間に受けた外部被ばくによる実効線量の算定値に最も近いものは、(1)~(5)のうちどれか。
ただし、防護衣の中は均等被ばくとみなし、外部被ばくによる実効線量は、その評価に用いる線量当量についての測定値から次の式により算出するものとする。

HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
HEE:外部被ばくによる実効線量
Ha:頭・頸(けい)部における線量当量
Hb:胸・上腕部における線量当量
Hc:腹・大腿(たい)部における線量当量
Hm:「頭・頸(けい)部」、「胸・上腕部」及び「腹・大腿(たい)部」のうち被ばくが最大となる部位における線量当量

問30表

(1)0.25mSv
(2)0.30mSv
(3)0.40mSv
(4)0.50mSv
(5)0.60mSv


答え(4)
この問題は、被ばく線量の測定結果から「外部被ばくによる実効線量」を算定するものです。
もし全身に均等に被ばくする場合は、基本装着部位(男性は胸部、女性は腹部)に個人被ばく線量計を装着し、そこで測定した1cm線量当量を、外部被ばくによる実効線量とします。
しかし、今回は各部位で測定値が異なる不均等被ばくです。
このような場合の外部被ばくによる実効線量は次の式で算出できます。

HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
HEE:外部被ばくによる実効線量
Ha:頭・頸部における1cm線量当量
Hb:胸・上腕部における1cm線量当量
Hc:腹・大腿部における1cm線量当量
Hm:「頭・頸部」「胸・上腕部」「腹・大腿部」のうち外部被ばくによる実効線量が最大となるおそれのある部位における1cm線量当量

臓器・組織ごとに放射線リスクが異なる為、上記の式では、各部位で異なる係数を掛けることになっています。
また、各部位の1cm線量当量は、それぞれの部位に装着した個人被ばく線量計の測定値を用いることが原則ですが、測定されていない場合は、他の部位のうち最大の1cm線量当量を該当部位の1cm線量当量とします。
または、線量不明の部位にもっとも近い部位に装着された線量計による1cm線量当量と同程度であることが明らかな場合には、その近接部位の1cm線量当量を用います。
問題文では「防護衣の中は均等被ばくとみなし」とありますので、胸部と腹・大腿部の測定値は同程度となり、Hcには0.4を用います。
それぞれの値を代入して、外部被ばくによる実効線量を求めます。

HEE=0.08×1.2 + 0.44×0.4 + 0.45×0.4 + 0.03×1.2
 =0.488

したがって、実効線量の算定値について、最も近いものは(4)0.50mSvです。


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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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