X線作業主任者の過去問の解説:測定(2022年4月)
ここでは、2022年(令和4年)4月公表の過去問のうち「エックス線の測定に関する知識(問21~問30)」について解説いたします。
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◆X線作業主任者の過去問の解説:生体(2022年4月)
問21 エックス線の量に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)放射線に関する量は、その目的に応じて異なった量が定義されており、物理量、防護量及び実用量の三つの量に大別される。
(2)カーマは、物理量である。
(3)等価線量は、防護量である。
(4)実効線量は、実用量である。
(5)エックス線の放射線加重係数は、1である。
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。実効線量は、「防護量」です。
主な放射線の量の分類を下記に示します。
問22 放射線に関連した量とその単位の組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。
(1)吸収線量 ……………… Gy
(2)カーマ ………………… Gy
(3)LET ………………… eV・m
(4)線減弱係数…………… m-1
(5)粒子フルエンス……… m-2
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。LETの単位は、J・m-1またはkeV・μm-1で、物質中を電離放射線が通過するとき、荷電粒子の飛跡に沿って単位長さ当たりの物質に与えられる平均エネルギーを表します。
問23 放射線検出器とそれに関係の深い事項との組合せとして、正しいものは次のうちどれか。
(1)電離箱…………………………… ガス増幅
(2)比例計数管……………………… グロー曲線
(3)化学線量計……………………… G値
(4)シンチレーション検出器……… 緑色レーザー光
(5)半導体検出器…………………… 電子増倍率
(1)は誤り。電離箱と関係の深い事項に、飽和領域、W値などがあります。また、ガス増幅は、GM計数管や比例計数管と関係の深い事項です。
(2)は誤り。比例計数管と関係の深い事項に、気体増幅(ガス増幅)、電子なだれなどがあります。また、グロー曲線は、熱ルミネセンス線量計と関係の深い事項です。
(3)は正しい。
(4)は誤り。シンチレーション検出器と関係の深い事項に、光電子増倍管、蛍光作用などがあります。また、緑色レーザー光は、光刺激ルミネセンス線量計と関係の深い事項です。
(5)は誤り。半導体検出器と関係の深い事項に、空乏層、電子・正孔対などがあります。また、電子増倍率は、シンチレーション検出器と関係の深い事項です。
問24 GM計数管に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)GM計数管の電離気体としては、通常、アルゴンなどの希ガスが用いられる。
(2)GM計数管には、放射線によって生じる放電を短時間で消滅させるため、消滅ガスとして、少量のアルコール又はハロゲンガスが混入される。
(3)回復時間は、入射放射線により一度放電し、一時的に検出能力が失われた後、パルス波高が通常の波高になるまでの時間である。
(4)分解時間は、入射放射線により一度放電し、一時的に検出能力が失われた後、パルス波高が弁別レベルまで回復するまでの時間で、GM計数管が測定できる最大計数率に関係する。
(5)出力されたパルス波高は、入射放射線のエネルギーに比例する。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。出力されたパルス波高は、入射放射線のエネルギーに比例しません。
問25 蛍光ガラス線量計(RPLD)と光刺激ルミネセンス線量計(OSLD)に関する次のAからDの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。
A 素子として、RPLDでは銀活性リン酸塩ガラスが、OSLDでは炭素添加酸化アルミニウムなどが用いられている。
B 線量読み取りのための発光は、RPLDでは紫外線照射により、OSLDでは緑色レーザー光の照射により行われる。
C 線量の読み取りは、OSLDでは繰り返し行うことができるが、RPLDでは1回しか行うことができない。
D RPLDの素子は、使用後、高温下でのアニーリングにより再度使用することができるが、OSLDの素子は1回しか使用することができない。
(1)A,B
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)B,D
A,Bは正しい。
Cは誤り。線量の読み取りは、OSLD、RPLDともに、繰り返し行うことができます。
Dは誤り。RPLDの素子は、高温下でのアニーリングにより再度使用することができます。また、OSLDの素子は、強い光を当てる光学的アニーリングにより再度使用することができます。
問26 放射線の測定の用語に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)放射線が気体中で1対のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値といい、放射線の種類やエネルギーにあまり依存せず、気体の種類によりほぼ一定の値をとる。
(2)入射放射線によって気体中に作られたイオン対のうち、電子が電界で強く加速され、更に多くのイオン対を発生させることを気体(ガス)増幅という。
(3)GM計数管の特性曲線において、印加電圧の変動が計数率に影響を与えない領域をプラトーといい、プラトー領域の印加電圧では、入射放射線による一次電離量に比例した大きさの出力パルスが得られる。
(4)出力パルスの計数を計測する放射線測定器を用いて低線量率の放射線を測定するときは、時定数を長く設定して測定する。
(5)線量率計の検出感度が、放射線のエネルギーによって異なる性質をエネルギー依存性という。
(2)(3)(4)(5)は正しい。
(1)は誤り。気体に放射線を照射したとき、1個のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値といい、放射線の種類やエネルギーにあまり依存せず、気体の種類に応じてほぼ一定の値をとります。
問27 男性の放射線業務従事者が、エックス線装置を用い、肩から大腿(たい)部までを覆う防護衣を着用して放射線業務を行った。
労働安全衛生関係法令に基づき、胸部(防護衣の下)及び頭・頸(けい)部の2か所に放射線測定器を装着して、被ばく線量を測定した結果は、次の表のとおりであった。
この業務に従事した間に受けた外部被ばくによる実効線量の算定値について、最も近いものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、防護衣の中は均等被ばくとみなし、外部被ばくによる実効線量は、その評価に用いる線量当量についての測定値から次の式により算出するものとする。
HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
HEE:外部被ばくによる実効線量
Ha :頭・頸部における線量当量
Hb :胸・上腕部における線量当量
Hc :腹・大腿部における線量当量
Hm :「頭・頸部」、「胸・上腕部」又は「腹・大腿部」のうち被ばくが最大となる部位における線量当量
(1)0.20mSv
(2)0.30mSv
(3)0.35mSv
(4)0.50mSv
(5)0.55mSv
答え(3)
この問題は、被ばく線量の測定結果から「外部被ばくによる実効線量」を算定するものです。
もし全身に均等に被ばくする場合は、基本装着部位(男性は胸部、女性は腹部)に個人被ばく線量計を装着し、そこで測定した1cm線量当量を、外部被ばくによる実効線量とします。
しかし、今回は各部位で測定値が異なる不均等被ばくです。
このような場合の外部被ばくによる実効線量は次の式で算出できます。
HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
HEE:外部被ばくによる実効線量
Ha:頭・頸部における1cm線量当量
Hb:胸・上腕部における1cm線量当量
Hc:腹・大腿部における1cm線量当量
Hm:「頭・頸部」「胸・上腕部」「腹・大腿部」のうち外部被ばくによる実効線量が最大となるおそれのある部位における1cm線量当量
臓器・組織ごとに放射線リスクが異なる為、上記の式では、各部位で異なる係数を掛けることになっています。
また、各部位の1cm線量当量は、それぞれの部位に装着した個人被ばく線量計の測定値を用いることが原則ですが、測定されていない場合は、他の部位のうち最大の1cm線量当量を該当部位の1cm線量当量とします。
または、線量不明の部位にもっとも近い部位に装着された線量計による1cm線量当量と同程度であることが明らかな場合には、その近接部位の1cm線量当量を用います。
問題文では「防護衣の中は均等被ばくとみなし」とありますので、胸部と腹・大腿部の測定値は同程度となり、Hcには0.3を用います。
それぞれの値を代入して、外部被ばくによる実効線量を求めます。
HEE=0.08×0.8 + 0.44×0.3 + 0.45×0.3 + 0.03×0.8
=0.355
したがって、実効線量の算定値について、最も近いものは(3)0.35mSvです。
問28 GM計数管式サーベイメータによりエックス線を測定し、1,000cpsの計数率を得た。
GM計数管の分解時間が200μsであるとき、数え落としの値(cps)は次のうちどれか。
(1) 20
(2) 50
(3)170
(4)200
(5)250
答え(5)
GM計数管式サーベイメータを用いて測定を行うと、分解時間内に数え落しが起こり、真の計数率(本当の計数率)と異なる値を示します。
真の計数率を求める公式は次の通りです。
M=m/(1-mt)
Mは真の計数率を、mは実測の計数率を、tは分解時間を表します。
それでは、問題文の数値を公式に代入して、計算していきましょう。
分解時間の200μsを、秒に直すと0.0002sです。
M=1,000[cps]/(1-1,000[cps]×0.0002[s])=1,250[cps]
真の計数率は、1,250cpsだとわかりました。
今回求めたいのは、数え落としの値ですので、真の計数率から実測の計数率を引きます。
1,250[cps]-1,000[cps]=250[cps]
したがって、数え落としの値は(5)250です。
問29 サーベイメータに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1)電離箱式サーベイメータは、エネルギー依存性及び方向依存性が小さいので、散乱線の多い区域の測定に適している。
(2)電離箱式サーベイメータは、一般に、湿度の影響により零点の移動が起こりやすいので、測定に当たり留意する必要がある。
(3)半導体式サーベイメータは、20keV程度のエネルギーのエックス線の測定には適していない。
(4)シンチレーション式サーベイメータは、30keV程度のエネルギーのエックス線の測定には適していない。
(5)NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータは、入射エックス線のエネルギー分析における分解能が半導体式サーベイメータに比べて優れている。
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。入射エックス線のエネルギー分析における分解能は、NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータより、半導体式サーベイメータの方が優れています。
問30 あるエックス線について、サーベイメータの前面に鉄板を置き、半価層を測定したところ1.5mmであった。
このエックス線のおおよそのエネルギーは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、エックス線のエネルギーと鉄の質量減弱係数との関係は下図のとおりとし、loge2=0.69とする。
また、この鉄板の密度は7.8g/cm3とする。
(1) 70keV
(2) 80keV
(3) 90keV
(4)100keV
(5)110keV
答え(2)
この問題は、鉄の質量減弱係数を求めて、グラフからエックス線のエネルギーを読み取るものです。
問題文では「半価層を測定したところ1.5mm」とありますが、後で計算に使う「鉄板の密度は7.8g/cm3」の単位と合わせるため、cm単位に直します。
1.5[mm]÷10[mm/cm]=0.15[cm]
続いて、半価層の関係式「減弱係数μ×半価層h=loge2」を用いて鉄板の減弱係数を計算します。
また問題文には「loge2=0.69」とありますので、μ=0.69/hとして計算します。
μ[cm-1]=0.69/0.15[cm]
μ[cm-1]=4.6[cm-1]
続いて、質量減弱係数の関係式「質量減弱係数μm=減弱係数/密度」を用いて鉄の質量減弱係数を計算します。
先ほど求めた鉄板の減弱係数4.6cm-1と、問題文で与えられている「鉄板の密度7.8g/cm3」を代入します。
μm[cm2/g]=4.6[cm-1]/7.8[g/cm3]
μm[cm2/g]≒0.59[cm2/g]
これで鉄の質量減弱係数は、およそ0.59cm2/gだとわかりました。
これをグラフに当てはめると、このエックス線のおよその実効エネルギーは(2)80keVだと読み取れます。
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