X線作業主任者の過去問の解説:管理(2022年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:管理(2022年4月)

ここでは、2022年(令和4年)4月公表の過去問のうち「エックス線の管理に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2022年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2022年4月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:測定(2022年4月)
◆X線作業主任者の過去問の解説:生体(2022年4月)



問1 エックス線に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)エックス線は、エックス線管の陰極と陽極の間に高電圧をかけて発生させる高エネルギーの荷電粒子の流れである。
(2)制動エックス線は、原子のエネルギー準位の遷移に伴って発生する。
(3)エックス線は、直接電離放射線である。
(4)連続エックス線は、高エネルギー電子が原子核近傍の強い電場を通過するとき急に減速され、運動エネルギーの一部を電磁波の形で放出するものである。
(5)エックス線管の管電圧を高くすると、特性エックス線の波長は短くなるが、その強さは変わらない。


答え(4)
(1)は誤り。エックス線は、電磁波です。一方、アルファ線やベータ線は、荷電粒子の流れです。
(2)は誤り。特性エックス線は、軌道電子がエネルギー準位の高い軌道から低い軌道へと転移(遷移)するとき発生します。
(3)は誤り。エックス線は、電荷を持たない間接電離放射線です。
一般的に放射線は、原子の電離作用を持つ電離放射線のことを指しますが、可視光線などの非電離放射線を含めることもあります。
電荷を持つ電離放射線を直接電離放射線といい、電荷を持たない電離放射線を間接電離放射線といいます。
主な放射線の分類は下記表をご覧ください。
問1表
(4)は正しい。
(5)は誤り。エックス線管の管電圧を高くしても、特性エックス線の波長は変わりませんが、その強さは増大します。



問2 工業用エックス線装置のエックス線管及びエックス線の発生に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)陰極のフィラメントには、融点が高く抵抗の小さいタングステンが用いられ、陽極のターゲットには、熱伝導性の良い銅が用いられる。
(2)陽極のターゲットはエックス線管の軸に対して斜めになっており、エックス線が発生する領域である実焦点より、これをエックス線束の利用方向から見た実効焦点の方が大きくなるようにしてある。
(3)エックス線管の管電流は、陰極から陽極に向かって流れる。
(4)陽極のターゲットに衝突する直前の電子の運動エネルギーは、管電圧の2乗に比例する。
(5)陰極のフィラメント端子間の電圧は、フィラメント加熱用の降圧変圧器を用いて10~20V程度にされている。


答え(5)
(1)は誤り。陰極のフィラメントには、融点が高く電気抵抗の大きいタングステンが用いられます。陽極のターゲットには、原子番号が大きく、高温になるため融点の高いタングステンのほか、モリブデンなどが用いられます。
(2)は誤り。陽極のターゲットはエックス線管の軸に対して斜めになっており、加速された熱電子が衝突しエックス線が発生する領域である実焦点よりも、これをエックス線束の利用方向から見た実効焦点の方が小さくなります。
(3)は誤り。エックス線管の管電流は、陽極から陰極に向かって流れます
(4)は誤り。陽極のターゲットに衝突する直前の電子の運動エネルギーは、管電圧に比例します。
(5)は正しい。



問3 エックス線管の管電流又は管電圧の変化に対応したエックス線の発生に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)管電流を一定にして管電圧を上げると、エックス線の全強度は管電圧に比例して増加する。
(2)管電圧を一定にして管電流を上げると、エックス線の全強度は管電流に比例して増加する。
(3)管電圧を一定にして管電流を上げても、エックス線の最大エネルギーは変わらない。
(4)管電流を一定にして管電圧を上げると、エックス線の最大エネルギーは高くなる。
(5)管電流を一定にして管電圧を上げると、エックス線の最短波長は管電圧に反比例して短くなる。


答え(1)
(1)は誤り。エックス線の全強度は管電圧の2乗に比例して増加します。
(2)(3)(4)(5)は正しい。



問4 エックス線と物質との相互作用に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)光電効果とは、原子の軌道電子がエックス線光子のエネルギーを吸収して原子の外に飛び出し、光子が消滅する現象である。
(2)光電効果が起こる確率は、エックス線のエネルギーが高くなるほど低下する。
(3)光電効果により原子から放出される電子を反跳電子という。
(4)コンプトン効果とは、エックス線光子と原子の軌道電子とが衝突し、電子が原子の外に飛び出し、光子が運動の方向を変える現象である。
(5)コンプトン効果による散乱エックス線は、入射エックス線のエネルギーが低い場合は、横方向より前方と後方に散乱されやすい。


答え(3)
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。光電効果により原子から放出される電子は、光電子とよばれます。
なお、コンプトン効果により原子から放出される電子が、反跳電子です。



問5 単一エネルギーで太い線束のエックス線が物体を透過するときの減弱式における再生係数(ビルドアップ係数)Bを表す式として、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、IP、ISは、次のエックス線の強度を表すものとする。

IP:物体を直進して透過し、測定点に到達した透過線の強度
IS:物体により散乱されて、測定点に到達した散乱線の強度

(1)B=1+IS/IP
(2)B=1+IP/IS
(3)B=1-IS/IP
(4)B=IP/IS-1
(5)B=IP/IS


答え(1)
再生係数Bは、測定点に到達した散乱線の強度の割合を表すものです。
したがって、次のように計算することができます。

再生係数B=(透過線強度IP+散乱線強度IS)/透過線強度IP
 =1+散乱線強度IS/透過線強度IP



問6 単一エネルギーの細いエックス線束が物体を透過するときの減弱に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)半価層h(cm)は、減弱係数μ(cm-1)に反比例する。
(2)半価層は、エックス線のエネルギーが変わっても変化しない。
(3)半価層は、エックス線の線量率が高くなると厚くなる。
(4)軟エックス線の場合は、硬エックス線の場合より、半価層が厚い。
(5)1/10価層H(cm)と半価層h(cm)との間には、H=(loge2/loge10)hの関係がある。


答え(1)
(1)は正しい。半価層h(cm)と減弱係数μ(cm-1)は、「h=loge2/μ」の関係式で表すことができ、反比例していることがわかります。たとえば、μの値が1から2に大きくなれば、hの値は2分の1に小さくなります。
(2)は誤り。半価層の値は、エックス線のエネルギー、または物体の種類が変わると変化します。たとえば、エックス線のエネルギーが大きくなれば、半価層の値は大きくなります。
(3)は誤り。半価層の値は、エックス線の線量率が変わっても変化しません。
(4)は誤り。硬エックス線(エネルギーの大きいエックス線)の場合は、軟エックス線(エネルギーの小さいエックス線)の場合より、半価層が厚くなります。
(5)は誤り。1/10価層H(cm)と半価層h(cm)との間には、H=(loge10/loge2)hの関係があります。



問7 あるエネルギーのエックス線に対する半価層が5mmの遮へい板P、10mmの遮へい板Q、15mmの遮へい板Rがあり、板厚はともに10mmである。
これらを用いた次のAからDの遮へい体により、このエックス線を遮へいするとき、遮へい効果の高いものから順に並べたものは(1)~(5)のうちどれか。

A 遮へい板Pを2枚重ねた遮へい体
B 遮へい板Qを3枚重ねた遮へい体
C 遮へい板P1枚と遮へい板Q1枚と遮へい板R1枚を重ねた遮へい体
D 遮へい板P1枚と遮へい板R2枚を重ねた遮へい体

(1)A > C > D > B
(2)A > D > C > B
(3)B > A > D > C
(4)B > D > C > A
(5)C > D > A > B


答え(1)
この問題では、減弱の式を用いて、A、B、C、Dそれぞれの遮へい体のパターンについて、遮へい効果の高いものから順に並べたものを選択します。

今回のように、複数の遮へい体を重ね合わせる場合、減弱割合の積(掛け算)となるので次の式を用います。
▼遮へい体を2枚重ねた場合
I=I0 (1/2) xa / ha × (1/2) xb / hb
▼遮へい体を3枚重ねた場合
I=I0 (1/2) xa / ha × (1/2) xb / hb × (1/2) xc / hc

まず、A(遮へい板Pを2枚重ねた遮へい体)の遮へい体の遮へい効果を求めます。
I=I0 (1/2) 10 [mm] / 5 [mm] × (1/2) 10 [mm] / 5 [mm]
I=I0 (1/2) 2 × (1/2) 2
I=I0 (1/2) 4

続いて、B(遮へい板Qを3枚重ねた遮へい体)の遮へい体の遮へい効果を求めます。
I=I0 (1/2) 10 [mm] / 10 [mm] × (1/2) 10 [mm] / 10 [mm] × (1/2) 10 [mm] / 10 [mm]
I=I0 (1/2) 1 × (1/2) 1 × (1/2) 1
I=I0 (1/2) 3

続いて、C(遮へい板P1枚と遮へい板Q1枚と遮へい板R1枚を重ねた遮へい体)の遮へい体の遮へい効果を求めます。
I=I0 (1/2) 10 [mm] / 5 [mm] × (1/2) 10 [mm] / 10 [mm] × (1/2) 10 [mm] / 15 [mm]
I=I0 (1/2) 2 × (1/2) 1 × (1/2) 0.66…
I=I0 (1/2) 3.66…

最後に、D(遮へい板P1枚と遮へい板R2枚を重ねた遮へい体)の遮へい体の遮へい効果を求めます。
I=I0 (1/2) 10 [mm] / 5 [mm] × (1/2) 10 [mm] / 15 [mm] × (1/2) 10 [mm] / 15 [mm]
I=I0 (1/2) 2 × (1/2) 0.66… × (1/2) 0.66…
I=I0 (1/2) 3.33…

(1/2)の右上の指数の値が大きいほど、遮へい効果が高くなります。
したがって、(1)A > C > D > Bが正解です。



問8 管理区域を設定するための外部放射線の測定に関する次の文中の[  ]内に入れるAからCの数値又は語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。

「測定点の高さは、作業床面上約[ A ]mの位置とし、あらかじめ計算により求めた[ B ]の低い箇所から逐次高い箇所へと測定していく。
測定前に、バックグラウンド値を調査しておき、これを測定値[ C ]値を測定結果とする。」

(1)A:1  B:1cm線量当量又は70μm線量当量  C:から差し引いた
(2)A:1  B:1cm線量当量又は1cm線量当量率  C:から差し引いた
(3)A:1  B:1cm線量当量又は1cm線量当量率  C:に加算した
(4)A:1.5 B:1cm線量当量率          C:から差し引いた
(5)A:1.5 B:1cm線量当量率又は70μm線量当量 C:に加算した


答え(2)
測定点の高さは、作業床面上約1mの位置とします。座ったときに胸、立ったときにお腹あたりの位置で測定すると覚えましょう。
測定する際の留意事項として、あらかじめ計算により求めた1cm線量当量又は1cm線量当量率の低い箇所から逐次高い箇所へと測定していきます。
測定前に、バックグラウンド値(自然放射線量などの値)を調査しておき、これを測定値から差し引いた値を測定結果とします。



問9 下図のように、エックス線装置を用いて鋼板の透過写真撮影を行うとき、エックス線管の焦点から2mの距離のP点における写真撮影中の1cm線量当量率は0.3mSv/hである。
エックス線管の焦点とP点を結ぶ直線上で、焦点からP点の方向に12mの距離にあるQ点を管理区域の境界の外側になるようにすることができる1週間当たりの撮影可能な写真の枚数として、最大のものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、露出時間は1枚の撮影について100秒間であり、3か月は13週とする。

問10図

(1)290枚/週
(2)360枚/週
(3)430枚/週
(4)560枚/週
(5)680枚/週


答え(3)
この問題は、図のQ点が管理区域の境界線の外側にあるとき、1週間当たりの撮影可能な写真の最大枚数を求めるものです。
なお、管理区域とは、3か月あたり1.3mSvを超えるおそれのある区域です。

まず、週の撮影枚数をNとし、3か月当たりの全撮影時間を計算します。

全撮影時間=1枚当たりの露出時間×週の撮影枚数×3か月の週数
 =100/3,600[h/枚]×N[枚/週]×13[週/3か月]
 =(1,300/3,600)N[h/3か月]

割り切れない場合は、分数のまま計算した方が後の計算式がスッキリします。

次に、P点における3か月当たりの線量当量を計算します。

線量当量=線量当量率×全撮影時間
 =0.3[mSv/h]×(1,300/3,600)N[h/3か月]
 =(390/3,600)N[mSv/3か月]

それでは、逆2乗則を使って、週の撮影枚数Nを求めましょう。
逆2乗則は、強度が距離の2乗に反比例して減少する法則なので、次のような計算式で表されます。

強度(P点)/強度(Q点)=距離(Q点)2/距離(P点)2

(390/3,600)N[mSv/3か月]/1.3[mSv/3か月]=122[m]/22[m]
390N/1.3×3,600=144/4
390N=144×1.3×3,600/4
390N=168,480
N=168,480/390
N=432

したがって、Q点を管理区域の境界の外側になる1週間当たりの撮影可能な写真の最大枚数は、(3)430枚/週です。



問10 下図のように、エックス線装置を用いて鋼板の透過写真撮影を行うとき、エックス線管の焦点から2mの距離にあるP点における写真撮影中の1cm線量当量率は320μSv/hである。
この装置を使って、露出時間が1枚につき2分の写真を週300枚撮影するとき、P点の後方に遮へい体を設けることにより、エックス線管の焦点からP点の方向に4mの距離にあるQ点が管理区域の境界線上にあるようにすることのできる遮へい体の厚さは、次のうちどれか。
ただし、遮へい体の半価層は5mmとし、3か月は13週とする。

問10図

(1)5mm
(2)15mm
(3)25mm
(4)30mm
(5)40mm


答え(2)
この問題では、距離の逆2乗則と減弱の式を用いて、遮へい体の厚さを求めます。

まず、問題文で与えられている値から3か月の全照射時間を計算します。
なお、3か月単位にするのは、管理区域が1.3mSv/3か月を超えるおそれのある区域だからです。

照射時間=露出時間[min/枚]×週の撮影枚数[枚/週]×3か月の週数[週/3か月]
 =2[min/枚]×300[枚/週]×13[週/3か月]
 =7,800[min/3か月]

次の計算をしやすくするために、分単位から時間単位に直します。

7,800[min/3か月]÷60[min/h]=130[h/3か月]

この3か月の全照射時間にP点における写真撮影中の1cm線量当量率「320μSv/h」を掛けて3か月あたりの1cm線量当量率を求めます。

130[h/3か月]×320[μSv/h]=41,600[μSv/3か月]

次の計算をしやすくするために、μSv/3か月単位からmSv/3か月単位に直します。

41,600[μSv/3か月]÷1,000[μSv/mSv]=41.6[mSv/3か月]

続いて、距離の逆2乗則を用いて、焦点から8mの距離にあるQ点の3か月当りの1cm線量当量率を計算します。
なお、ここではQ点の3か月当りの1cm線量当量率をAとします。

A[mSv/3か月]/41.6[mSv/3か月]=22[m]/42[m]
A[mSv/3か月]=4[m]×41.6[mSv/3か月])/16[m]
A[mSv/3か月]=10.4[mSv/3か月]

続いて、今求めた「Q点の3か月当りの1cm線量当量率10.4mSv/3月」と「管理区域の境界の線量率1.3mSv/3月」、問題文ただし書きの「遮へい体の半価層は5mm」を、減弱の式に代入して、「エックス線管の焦点からP点の方向に8mの距離にあるQ点が管理区域の境界線上にあるようにすることのできる遮へい体の厚さ」を計算します。
なお、ここでは遮へい体の厚さをxとします。

1.3[mSv/3か月]=10.4[mSv/3か月]×(1/2)x[mm]/5[mm]
1.3[mSv/3か月]/10.4[mSv/3か月]=(1/2)x[mm]/5[mm]
1/8=(1/2)x[mm]/5[mm]
1/2×1/2×1/2=(1/2)x[mm]/5[mm]
(1/2)3=(1/2)x[mm]/5[mm]

左辺と右辺の指数の部分を抜き出すと次のようになります。

3=x[mm]/5[mm]
x[mm]=15[mm]

したがって、遮へい体の厚さは(2)15mmが正解です。


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