X線作業主任者の過去問の解説:生体(2021年10月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:生体(2021年10月)

ここでは、2021年(令和3年)10月公表の過去問のうち「エックス線の生体に与える影響に関する知識(問11~問20)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2021年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2021年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2021年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2021年10月)



問11 放射線感受性に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)細胞分裂の周期の中で、S期(DNA合成期)初期は、S期後期より放射線感受性が高い。
(2)細胞分裂の周期の中で、S期(DNA合成期)後期は、M期(分裂期)より放射線感受性が高い。
(3)細胞分裂の周期の中で、G1期(DNA合成準備期)後期は、G2期(分裂準備期)初期より放射線感受性が低い。
(4)細胞に放射線を照射したときの線量を横軸に、細胞の生存率を縦軸にとってグラフにすると、ほとんどの哺乳動物細胞では指数関数型となる。
(5)平均致死線量は、細胞の生存率曲線において、その細胞集団のうち半数の細胞を死滅させる線量で、細胞の放射線感受性の指標とされる。


答え(1)
(1)は正しい。細胞分裂は次のイラストの通り、G1期→S期→G2期→M期の順に進みます。
S期ではDNA量が2倍に増え、G2期を経て、M期で細胞が分裂し、G1期に戻ります。
このようにして細胞が増殖するのです。
問1イラスト
(2)は誤り。G1期の後期からS期の前期の放射線感受性が高く、M期が最も高くなっています。したがって、M期は、S期後期より放射線感受性が高いことになります。
(3)は誤り。G1期の後期は、G2期の初期より放射線感受性が高いです。
(4)は誤り。細胞に放射線を照射したとき、線量を横軸に、細胞の生存率を縦軸にとりグラフにすると、ヒトを含むほとんどの哺乳動物細胞ではシグモイド型となります。
(5)は誤り。平均致死線量は、細胞の放射線感受性の指標として用いられ、細胞の生存率曲線においてその細胞集団のうち37%が生存するときの線量です。

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エックス線作業主任者の予想問題



問12 放射線による生物学的効果に関する次の現象のうち、放射線の間接作用によって説明することができないものはどれか。

(1)生体中に存在する酸素の分圧が高くなると、放射線の生物学的効果は増大する。
(2)温度が低下すると、放射線の生物学的効果は減少する。
(3)生体中にシステイン、システアミンなどのSH基をもつ化合物が存在すると、放射線の生物学的効果は軽減する。
(4)溶液中の酵素の濃度を変えて一定線量のエックス線を照射するとき、不活性化される酵素の分子数は酵素の濃度に比例する。
(5)溶液中の酵素の濃度を変えて一定線量のエックス線を照射するとき、酵素の濃度が減少するに従って、酵素の全分子数のうち、不活性化される分子の占める割合は増大する。


答え(4)
(1)は間接作用によって説明できる。酸素効果です。
(2)は間接作用によって説明できる。温度効果です。
(3)は間接作用によって説明できる。防護効果です。
(4)は間接作用によって説明できない。これは直接作用によって説明できることです。
(5)は間接作用によって説明できる。



問13 放射線の被ばくによる確率的影響及び確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)確定的影響では、被ばく線量と障害の発生率との関係は二次曲線グラフで示される。
(2)確率的影響の発生を完全に防止することは、放射線防護の目的の一つである。
(3)確定的影響では、被ばく線量が増加すると、障害の重篤度が大きくなる。
(4)確定的影響の程度は、実効線量により評価される。
(5)遺伝的影響は、確定的影響に分類される。


答え(3)
(1)は誤り。確定的影響では、被ばく線量と影響の発生確率の関係がS字状曲線(シグモイド曲線)で示されます。
(2)は誤り。確率的影響では、被ばく線量をなるべくゼロに近づけるために減少を目的とします。
(3)は正しい。
(4)は誤り。確定的影響の程度は、等価線量により評価される。
(5)は誤り。遺伝的影響には、しきい線量が無いと考えられていますので、確率的影響に分類されます。



問14 放射線の生体影響などに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)線量率効果とは、同じ線量を照射する場合に、線量率を低くすると、生物効果が小さくなることをいう。
(2)全致死線量は、半致死線量の2倍に相当する線量であり、この線量を被ばくした個体は数時間~数日のうちに死亡してしまう。
(3)半致死線量は、被ばくした集団の全ての個体が一定の期間内に死亡する最小線量の50%に相当する線量である。
(4)生物学的効果比(RBE)は、基準となる放射線と問題にしている放射線について、各々の同一線量を被ばくしたときの集団の生存率の比により、線質の異なる放射線の生物学的効果の大きさを比較したものである。
(5)LET(線エネルギー付与)とは、物質中を放射線が通過するとき、荷電粒子の飛跡に沿って単位長さ当たりに物質に与えられるエネルギーをいい、エックス線は高LET放射線に分類される。


答え(1)
(1)は正しい。
(2)は誤り。全致死線量は、被ばくした集団中の個体の全数が死亡する線量の最低値です。
(3)は誤り。半致死線量は、被ばくした集団のうち50%の個体が一定の期間内に死亡する線量です。
(4)は誤り。生物学的効果比(RBE)は、基準放射線と対象放射線の2種類の放射線が、同じ効果を与えるときの吸収線量の比で表されます。
(5)は誤り。エックス線は低LET放射線に分類されます。



問15 エックス線被ばくによる造血器官及び血液に対する影響に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)骨髄のうち赤色骨髄中の幹細胞が障害を受けると、末梢(しょう)血液中の血球数は減少していく。
(2)末梢血液中のリンパ球を除く白血球は、被ばく直後は一時的に増加が認められることがある。
(3)人の末梢血液中の有形成分の変化は、25μGy程度の被ばくから認められる。
(4)末梢血液中の有形成分のうち、被ばく後減少が現れるのが最も遅いものは赤血球である。
(5)人が全身にLD50/60に相当する線量を被ばくしたときの主な死因は、造血器官の障害である。


答え(3)
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。ヒトの末梢血液中の血球数の変化は、0.25Gy程度の被ばくから認められます。ちなみに、25μGy=0.025mGy=0.000025Gyです。



問16 次のAからDの放射線による身体的影響について、その発症にしきい線量が存在するものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 白血病
B 永久不妊
C 放射線宿酔
D 脱毛

(1)A,B,D
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)B,C,D


答え(5)
A白血病は、血液のがんといわれています。発がんは確率的影響なのでしきい線量が存在しません。
B永久不妊、C放射線宿酔、D脱毛は、確定的影響なのでしきい線量が存在します。



問17 放射線による遺伝的影響等に関する次のAからDの記述について、正しいものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 生殖細胞の突然変異には、遺伝子突然変異と染色体異常がある。
B 染色体異常は、正常な染色体の配列の一部が逆になることなどにより生じる。
C 生殖腺が被ばくしたときに生じるおそれのある障害には、遺伝的影響のほか、身体的影響に分類されるものがある。
D 放射線照射により、突然変異率を自然における値の2倍にする線量を倍加線量といい、ヒトでは約0.05Gyである。

(1)A, B
(2)A, C
(3)A, D
(4)B, C
(5)A, B, C


答え(5)
A, B, Cは正しい。
Dは誤り。ヒトの倍加線量は、約1Gyと推定されています。



問18 エックス線被ばくによる放射線皮膚炎の症状に関する次のAからDの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 0.2Gyの被ばくでは、皮膚の充血や腫脹(ちょう)がみられる。
B 3Gyの被ばくでは、軽度の紅斑や一時的な脱毛がみられる。
C 5Gyの被ばくでは、水疱(ほう)や永久脱毛がみられる。
D 25Gyの被ばくでは、進行性びらんや難治性の潰瘍がみられる。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(4)
B,Dは正しい。
Aは誤り。皮膚の充血や腫脹は、5~12Gy程度の被ばくでみられます。
Cは誤り。水疱や永久脱毛は、12~18Gy程度の被ばくでみられます。



問19 生物学的効果比(RBE)に関する次のAからDの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A RBEを求めるときの基準放射線としては、通常、アルファ線が用いられる。
B エックス線は、そのエネルギーの高低にかかわらず、RBEが1より小さい。
C RBEの値は、同じ線質の放射線であっても、着目する生物学的効果、線量率などの条件によって異なる。
D RBEは放射線の線エネルギー付与(LET)の増加とともに増大し、100keV/μm付近で最大値を示すが、更にLETが大きくなるとRBEは減少していく。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(5)
Aは誤り。RBEを求めるときの基準放射線としては、通常、低LET放射線であるエックス線やガンマ線が用いられます。
Bは誤り。対象放射線をエックス線とした場合も、エネルギーの高低により、生物への効果が異なるため、RBEが1より大きい場合、小さい場合があります。
Cは正しい。たとえば、基準放射線と問題にしている放射線がともにエックス線の場合も、線量率の大小によってRBEが異なります。
Dは正しい。LETとは、放射線の単位長さ当たりに与えるエネルギーを表す指標です。LETが100keV/μm付近の放射線が、DNAの近くを通ると必ずDNAが大きな障害を受けます。



問20 胎内被ばくに関する次のAからDの記述について、正しいものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 着床前期の被ばくでは胚(はい)の死亡が起こるが、被ばくしても生き残り、発育を続けて出生した子供には、被ばくによる影響はみられない。
B 器官形成期の被ばくでは、奇形が発生するおそれがある。
C 胎内被ばくによる奇形の発生のしきい線量は、ヒトでは5Gy程度である。
D 胎内被ばくを受け出生した子供にみられる発育遅延は、確率的影響に分類される。

(1)A,B
(2)A,B,C
(3)A,D
(4)B,C,D
(5)C,D


答え(1)
A,Bは正しい。
Cは誤り。胎内被ばくによる奇形の発生のしきい線量は、ヒトでは0.1Gy程度と推定されています。
Dは誤り。胎内被ばくによる全ての障害は、しきい線量が存在しますので、確定的影響に分類されます。

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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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