X線作業主任者の過去問の解説:生体(2016年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:生体(2016年4月)

ここでは、2016年(平成28年)4月公表の過去問のうち「エックス線の生体に与える影響に関する知識(問11~問20)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2016年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2016年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2016年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2016年4月)



問11 放射線感受性に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)細胞分裂の周期のS期(DNA合成期)後期の細胞は、M期(分裂期)の細胞より放射線感受性が低い。
(2)細胞分裂の周期のG1期(DNA合成準備期)後期の細胞は、G2期(分裂準備期)初期の細胞より放射線感受性が低い。
(3)細胞に放射線を照射したときの線量を横軸に、細胞の生存率を縦軸にとってグラフにすると、ほとんどの哺乳動物細胞では指数関数型となる。
(4)小腸の絨(じゅう)毛先端部の細胞は、腺窩(か)細胞(クリプト細胞)より放射線感受性が高い。
(5)骨組織の放射線感受性は、小児においても成人と同様に低い。


答え(1)
(1)は正しい。細胞分裂の周期は「G1期」、「S期」、「G2期」、「M期」の4つの過程に分けられており、これを順に進むことで1つの細胞が2つになります。まず、細胞分裂の周期を覚えておくことが重要です。
(2)は誤り。G1期後期の細胞は、G2期初期の細胞より放射線感受性が『高い』ことで知られています。
(3)は誤り。細胞に放射線を照射したときの線量を横軸に、細胞の生存率を縦軸にとってグラフにすると、ほとんどの哺乳動物細胞では『シグモイド型』となります。
(4)は誤り。腺窩細胞は盛んに細胞分裂が行われています。したがって、小腸の絨毛先端部の細胞は、腺窩細胞より放射線感受性が『低い』ことで知られています。
(5)は誤り。骨組織は、成人ではほとんど細胞分裂が行われませんが、小児では細胞分裂が盛んに行われているため、その放射線感受性は『高い』ことで知られています。



問12 エックス線の直接作用と間接作用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)エックス線光子と生体内の水分子を構成する原子との相互作用の結果生成されたラジカルが、直接、生体高分子に損傷を与える作用が直接作用である。
(2)エックス線光子によって生じた二次電子が、生体高分子の電離又は励起を行い、生体高分子に損傷を与える作用が間接作用である。
(3)エックス線のような低LET放射線が生体に与える影響は、直接作用によるものより間接作用によるものの方が大きい。
(4)生体中にシステイン、システアミンなどのSH基を有する化合物が存在すると放射線効果が軽減されることは、主に直接作用により説明される。
(5)溶液中の酵素の濃度を変えて一定線量のエックス線を照射するとき、酵素の濃度が減少するに従って酵素の全分子のうち不活性化される分子の占める割合が増加することは、直接作用により説明される。


答え(3)
(1)は誤り。ラジカルが原因となってDNAに損傷を与えるのは『間接作用』です。『直接作用』ではありません。
(2)は誤り。エックス線によって生じた二次電子がDNAに損傷を与えるのは『直接作用』です。『間接作用』ではありません。
(3)は正しい。LETは「線エネルギー付与」のことで、単位長さあたりに放射線が与えたエネルギーを意味します。LETは放射線の線質によって異なり、エックス線やガンマ線は、比較的LETが小さい放射線に分類されるため「低LET放射線」といわれます。
(4)は誤り。このように放射線効果が軽減されることは「防護効果」といわれますが、主に『間接作用』により説明されます。
(5)は誤り。このことは『間接作用』により説明されます。



問13 放射線によるDNAの損傷と修復に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)DNA損傷には、塩基損傷とDNA鎖切断があるが、エックス線のような間接電離放射線では、塩基損傷は生じない。
(2)DNA鎖切断のうち、二重らせんの両方が切れる2本鎖切断の発生頻度は、片方だけが切れる1本鎖切断の発生頻度より高い。
(3)細胞には、DNA鎖切断を修復する機能があり、修復が誤りなく行われれば、細胞は回復し、正常に増殖を続けるが、塩基損傷を修復する機能はない。
(4)DNA鎖切断のうち、1本鎖切断は2本鎖切断に比べて修復されやすい。
(5)DNA2本鎖切断の修復方式のうち、非相同末端結合修復は、DNA切断端どうしを直接結合する方式であるため、誤りなく行われる。


答え(4)
(1)は誤り。エックス線のような間接電離放射線でも、アルファ線のような直接電離放射線でも、塩基損傷は生じます。
(2)は誤り。2本鎖切断の方が、1本鎖切断より発生頻度は『低く』、3:100程度の頻度で起こるとされています。
(3)は誤り。塩基損傷についても修復する機能を持っています。
(4)は正しい。
(5)は誤り。非相同末端結合修復は、DNA配列が失われるため、誤りが多い修復方式です。



問14 放射線感受性に関する次の文中[   ]内に入れるAからCの組織・器官名の組合せとして、適切なものは(1)~(5)のうちどれか。

「成人の人体の組織・器官のうちの一部について、放射線に対する感受性の高いものから低いものへと順に並べると、[ A ]、[ B ]、[ C ]となる。」

(1)[A]甲状腺  [B]神経組織 [C]肺
(2)[A]神経組織 [B]肺    [C]筋肉
(3)[A]骨髄   [B]肺    [C]筋肉
(4)[A]筋肉   [B]甲状腺  [C]汗腺
(5)[A]甲状腺  [B]骨髄   [C]神経組織


答え(3)
それぞれ感受性の高いものから低いものへと順に並べてみます。

(1)は誤り。肺、甲状腺、神経組織。
(2)は誤り。肺、筋肉、神経組織。
(3)は正しい。
(4)は誤り。汗腺、甲状腺、筋肉。
(5)は誤り。骨髄、甲状腺、神経組織。



問15 放射線の被ばくによる確率的影響と確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)確率的影響では、被ばく線量が増加すると障害の重篤度が大きくなる。
(2)確定的影響では、被ばく線量と障害の発生率との関係は指数関数で示される。
(3)遺伝的影響は、確定的影響に分類される。
(4)実効線量は、確率的影響を評価するための量である。
(5)しきい線量は、確率的影響には存在するが、確定的影響には存在しない。


答え(4)
(1)は誤り。確率的影響では、被ばく線量が増加しても障害の『重篤度は変わらない』とされています。
(2)は誤り。確定的影響では、被ばく線量と障害の発生率との関係は『シグモイド型(S字状曲線)』で示されます。
(3)は誤り。遺伝的影響は、『確率的影響』に分類されます。
(4)は正しい。
(5)は誤り。しきい線量は、『確定的影響』に存在しますが、『確率的影響』には存在しません。



問16 放射線による遺伝的影響等に関する次のAからDまでの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 生殖細胞が被ばくしたときに生じる影響は、すべて遺伝的影響である。
B 生殖細胞の突然変異には、遺伝子突然変異と染色体異常がある。
C 小児が被ばくした場合でも、その子孫に遺伝的影響が生じるおそれがある。
D 放射線照射により、突然変異率を自然における値の2倍にする線量を倍加線量といい、その値が小さいほど遺伝的影響は起こりにくい。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(3)
Aは誤り。生殖細胞が被ばくしたときに生じる影響は、遺伝的影響の他、不妊などの身体的影響も起こります。
Dは誤り。倍加線量の値が『大きい』ほど遺伝的影響は起こりにくくなります。
B,Cは正しい。



問17 生体に対する放射線効果に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)線量率効果とは、同一線量の放射線を照射した場合でも、線量率の高低によって生物学的効果の大きさが異なることをいう。
(2)RBE(生物学的効果比)は、基準となる放射線と問題にしている放射線とが、同じ生物学的効果を与えるときの各々の吸収線量の比であり、線質の異なる放射線による生物学的効果を比較する場合に用いられる。
(3)OER(酸素増感比)は、細胞内に酸素が存在しない状態と存在する状態とで同じ生物学的効果を与える線量の比であり、酸素効果の大きさを表すときに用いられる。
(4)組織加重係数は、各組織・臓器の確率的影響に対する相対的なリスクを表す係数である。
(5)半致死線量は、被ばくした集団中のすべての個体が一定期間内に死亡する最小線量の50%に相当する線量である。


答え(5)
(5)は誤り。半致死線量は、被ばくした集団中の個体の50 %が一定期間内に死亡する線量です。なお、被ばくした集団中のすべての個体が一定期間内に死亡する最小線量は全致死線量ですが、この50%の線量が半致死線量になるわけではありません。
(1)(2)(3)(4)は正しい。



問18 ヒトが一時に全身にエックス線の照射を受けた場合の早期影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)0.5 Gy以下の被ばくでは、末梢血液の検査で異常が認められることはない。
(2)1~2 Gy程度の被ばくでは、放射線宿酔の症状が現れることはない。
(3)3~5 Gy程度の被ばくによる死亡は、主に造血器官の障害によるものである。
(4)被ばくした全員が60日以内に死亡する線量の最小値は、約4 Gyである。
(5)10~15 Gy程度の被ばくによる死亡は、主に中枢神経系の障害によるものである。


答え(3)
(1)は誤り。『0.25 Gy~0.5 Gy』程度の被ばくで、末梢血液の検査で異常が認められます。
(2)は誤り。放射線宿酔は、1~2 Gy程度の被ばくで現れます。症状としては、吐気、下痢などの胃腸症状、倦怠感、頭痛、発熱などの神経症状が見られます。
(3)は正しい。
(4)は誤り。被ばくした50%が60日以内に死亡する線量が半致死線量で、ヒトの場合その値は約4 Gyです。
(5)は誤り。10~15 Gy程度の被ばくによる死亡は、主に『消化器官』の障害によるものです。



問19 放射線による身体的影響に関する次のAからDまでの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 眼の水晶体上皮細胞が損傷を受けて発生する白内障は、早期影響に分類される。
B 白内障の潜伏期は、被ばく線量が多いほど短い傾向にある。
C 晩発影響である白血病の潜伏期は、その他のがんに比べて一般に短い。
D 放射線による皮膚障害のうち、脱毛は、潜伏期が1~3か月程度で、晩発影響に分類される。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(3)
Aは誤り。白内障は、平均の潜伏期が2年~3年で『晩発影響』に分類されます。『早期影響』ではありません。
Dは誤り。脱毛は、潜伏期が3週間程度で『早期影響』に分類されます。『晩発影響』ではありません。
B,Cは正しい。



問20 胎内被ばくに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)着床前期の被ばくでは胚(はい)の死亡が起こりやすく、生き残って発育を続けた胎児には、奇形が発生する。
(2)胎内被ばくにより胎児に生じる奇形は、確率的影響に分類される。
(3)器官形成期に被ばくした胎児には奇形が発生することはないが、出生後、精神発達遅滞が生じるおそれがある。
(4)胎児期には脳の放射線感受性が低く、この時期に被ばくしても、出生後、精神発達遅滞が生じることはないが、身体的な発育遅延が生じるおそれがある。
(5)胎内被ばくによる出生後の発育遅延は、確定的影響に分類される。


答え(5)
(1)は誤り。着床前期の被ばくでは、生き残って発育を続けた胎児には、放射線影響はみられません。奇形は『器官形成期』に被ばくした胎児に発生するおそれがあります。
(2)は誤り。奇形は、『確定的影響』に分類されます。
(3)は誤り。精神発達遅滞は『胎児期』に被ばくした胎児に発生するおそれがあります。(1)の解答も参考にしてください。
(4)は誤り。胎児期には脳の放射線感受性が『高く』、この時期に被ばくをすると、出生後、精神発達遅滞の他、身体的な発育遅延が生じるおそれがあります。
(5)は正しい。

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