X線作業主任者の過去問の解説:生体(2017年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:生体(2017年4月)

ここでは、2017年(平成29年)4月公表の過去問のうち「エックス線の生体に与える影響に関する知識(問11~問20)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2017年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2017年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2017年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2017年4月)



問11 放射線感受性に関する次の記述のうち、ベルゴニー・トリボンドーの法則に従っていないものはどれか。

(1)皮膚の基底細胞層は、角質層より感受性が高い。
(2)小腸の腺窩(か)細胞(クリプト細胞)は、絨(じゅう)毛先端部の細胞より感受性が高い。
(3)リンパ球は、骨髄中だけでなく、末梢(しょう)血液中においても感受性が高い。
(4)骨組織は、一般に放射線感受性が低いが、小児では比較的高い。
(5)神経組織から成る脳の放射線感受性は、成人では低いが、胎児では高い時期がある。


答え(3)
(3)の記述内容は正しいのですが、ベルゴニー・トリボンドーの法則に従っていません。
ベルゴニー・トリボンドーの法則とは、細胞と放射線の影響の受けやすさを表した次の3つの法則です。

1.細胞分裂の頻度の高いものほど、放射線感受性が高い。
2.将来行う細胞分裂の回数の多いものほど、放射線感受性が高い。
3.形態及び機能において未分化のものほど、放射線感受性が高い。

血球の一つであるリンパ球は、骨髄などの造血器官で作られます。
この法則に従えば、造血器官の中にある未分化なリンパ球は、放射線感受性が高くなります。
しかし、リンパ球は末梢血液中の成熟した状態でも、放射線感受性が高いことが分かっています。



問12 ヒトが一時に全身にエックス線の照射を受けた場合の早期影響に関する次のAからDまでの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 1~2Gy程度の被ばくで、放射線宿酔の症状が現れることはない。
B 3~5Gy程度の被ばくによる死亡は、主に造血器官の障害によるものである。
C 被ばくした全員が60日以内に死亡する線量の最小値は、約4Gyであると推定されている。
D 被ばくから死亡までの期間は、一般に消化器官の障害による場合の方が、造血器官の障害による場合より短い。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(4)
Aは誤り。1Gy程度の被ばくで、放射線宿酔の症状が現れます。その症状として、被ばく後48時間以内に食欲不振や吐き気などが見られます。
Bは正しい。なお、ヒトの半致死線量(LD50)は、約4Gyです。
Cは誤り。「被ばくした全員」ではありません。被ばくした半数が60日以内に死亡する線量は、約4Gyです。
Dは正しい。被ばく線量が大きくなれば、それだけ症状も重くなるため、死亡までの期間は短くなります。



問13 放射線の被ばくによる確率的影響及び確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)確率的影響では、被ばく線量と影響の発生確率の関係がS字状曲線で示される。
(2)確定的影響では、被ばく線量の増加とともに影響の発生確率は増加するが、障害の重篤度は変わらない。
(3)遺伝的影響は、確定的影響に分類される。
(4)実効線量は、確率的影響を評価するための量である。
(5)確率的影響の発生を完全に防止することは、放射線防護の目的の一つである。


答え(4)
(1)は誤り。「確率的影響」ではありません。確定的影響では、被ばく線量と影響の発生確率の関係がS字状曲線(シグモイド曲線)で示されます。
(2)は誤り。「確定的影響」ではありません。確率的影響では、被ばく線量の増加とともに影響の発生確率は増加しますが、障害の重篤度は変わりません。
(3)は誤り。「確定的影響」ではありません。遺伝的影響は、確率的影響に分類される。
(4)は正しい。なお、等価線量は、確定的影響を評価するための量です。
(5)は誤り。「確率的影響」ではありません。確定的影響の発生を完全に防止することは、放射線防護の目的の一つです。



問14 生物学的効果比(RBE)に関する次のAからDまでの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A エックス線は、そのエネルギーの高低にかかわらず、RBEが1より小さい。
B RBEの値は、同じ線質の放射線であっても、着目する生物学的効果、線量率などの条件によって異なる。
C RBEを求めるときの基準放射線としては、通常、アルファ線が用いられる。
D RBEは放射線の線エネルギー付与(LET)の増加とともに増大し、100keV/μm付近で最大値を示すが、更にLETが大きくなるとRBEは減少していく。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(4)
Aは誤り。エックス線のエネルギーが変われば、そのエネルギーが吸収される度合いも異なり、生物への影響にも違いが見られます。よって、RBEが1より大きい場合も、小さい場合もあります。
Cは誤り。RBEを求めるときの基準放射線としては、通常、エックス線やガンマ線などが用いられます。
B,Dは正しい。



問15 エックス線の直接作用と間接作用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)エックス線光子と生体内の水分子を構成する原子との相互作用の結果生成されたラジカルが、直接、生体高分子に損傷を与える作用が直接作用である。
(2)エックス線光子によって生じた二次電子が、生体高分子の電離又は励起を行い、生体高分子に損傷を与える作用が間接作用である。
(3)エックス線のような低LET放射線が生体に与える影響は、間接作用によるものより直接作用によるものの方が大きい。
(4)生体中にシステイン、システアミンなどのSH基を有する化合物が存在すると放射線効果が軽減されることは、主に直接作用により説明される。
(5)溶液中の酵素の濃度を変えて一定線量のエックス線を照射するとき、酵素の濃度が減少するに従って酵素の全分子のうち不活性化される分子の占める割合が増加することは、間接作用により説明される。


答え(5)
(1)は誤り。(1)と(2)の直接作用と間接作用の説明は、反対になっています。エックス線によって生じた二次電子が、生体高分子の電離又は励起を行い、生体高分子に損傷を与える作用が直接作用です。
(2)は誤り。エックス線光子と生体内の水分子を構成する原子との相互作用の結果生成されたラジカルが、生体高分子に損傷を与える作用が間接作用です。
(3)は誤り。エックス線の生体に与える影響は、直接作用によるものより間接作用によるものの方が大きいことで知られています。
(4)は誤り。SH基を有する化合物は、間接作用の主役であるラジカルと結合し安定化します。よって、この効果は間接作用により説明されます。
(5)は正しい。



問16 次のAからDまでの放射線による身体的影響について、その発症にしきい線量が存在するものすべての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 皮膚炎
B 永久不妊
C 甲状腺がん
D 再生不良性貧血

(1)A,B,D
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)B,C,D


答え(1)
しきい線量が存在する症状=確定的影響です。
つまり、しきい線量が存在しない症状(確率的影響)である、発がんと遺伝的影響以外のものを選択すればよいことになります。
なお、再生不良性貧血とは、通常の赤血球のみが減少する貧血と異なり、他のすべての血球が減少する造血器官の障害です。



問17 放射線の生物学的効果に関する次のAからDまでの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A LET(線エネルギー付与)とは、物質中を放射線が通過するとき、荷電粒子の飛跡に沿って単位長さ当たりに物質に与えられる平均エネルギーで、放射線の線質を表す指標である。
B 半数死線量は、被ばくした集団中の全個体が一定期間内に死亡する最小線量の50%に相当する線量である。
C OER(酸素増感比)とは、細胞内に酸素が存在しない状態と存在する状態とを比較し、同じ生物学的効果を与える線量の比で、酸素効果の大きさを表すものである。
D 倍加線量は、放射線による遺伝的影響を推定するための指標であり、その値が大きいほど遺伝的影響は起こりやすい。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(2)
Aは正しい。LET(線エネルギー付与)は、イメージしにくい指標ですが、その定義をしっかり覚えましょう。
Bは誤り。半数死線量は、被ばくした集団中の半数の個体が一定期間内に死亡する線量です。
Cは正しい。細胞内に酸素がたくさんある方が、放射線の効果が大きくなるのが酸素効果です。OERは、その酸素効果の大きさを表す指標です。
Dは誤り。倍加線量は、放射線による遺伝的影響を推定するための指標です。その値が大きいほど、その生殖細胞は放射線に耐性があり、遺伝的影響は起こりにくくなります。



問18 放射線によるDNAの損傷と修復に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)DNA損傷には、塩基損傷とDNA鎖切断があるが、エックス線のような間接電離放射線では、塩基損傷は生じない。
(2)DNA鎖切断のうち、二重らせんの両方が切れる2本鎖切断の発生頻度は、片方だけが切れる1本鎖切断の発生頻度より高い。
(3)細胞には、DNA鎖切断を修復する機能があり、修復が誤りなく行われれば、細胞は回復し、正常に増殖を続けるが、塩基損傷を修復する機能はない。
(4)DNA2本鎖切断の修復方式のうち、非相同末端結合修復は、DNA切断端どうしを直接結合する方式であるため、誤りなく行われる。
(5)DNA鎖切断のうち、1本鎖切断は2本鎖切断に比べて修復されやすい。


答え(5)
(1)は誤り。DNA損傷には、塩基損傷とDNA鎖切断があります。エックス線のような間接電離放射線でも、塩基損傷は生じます。
(2)は誤り。2本鎖切断の発生頻度は、1本鎖切断の発生頻度より低くなります。大体、2本鎖切断の誘発数が30あれば、1本鎖切断の誘発数は1,000あると考えられます。
(3)は誤り。塩基損傷を修復する機構として、除去修復などがあります。
(4)は誤り。非相同末端結合修復は、修復の際の誤りが多い修復方式です。
(5)は正しい。



問19 放射線による身体的影響に関する次のAからDまでの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 眼の水晶体上皮細胞が損傷を受けて発生する白内障は、早期影響に分類される。
B 白内障の潜伏期は、被ばく線量が多いほど短い傾向にある。
C 晩発影響である白血病の潜伏期は、その他のがんに比べて一般に短い。
D 放射線による皮膚障害のうち、脱毛は、潜伏期が1~3か月程度で、晩発影響に分類される。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(3)
Aは誤り。白内障は、被ばく後平均2~3年後に発症するため、晩発影響に分類されます。
Dは誤り。脱毛は、潜伏期が3週間程度で、早期影響に分類されます。
B,Cは正しい。



問20 胎内被ばくに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)着床前期に被ばくして生き残った胎児には、発育不全がみられる。
(2)胎内被ばくにより胎児に生じる奇形は、確定的影響に分類される。
(3)胎内被ばくのうち、奇形の発生するおそれが最も大きいのは、胎児期の被ばくである。
(4)胎内被ばくを受けて出生した小児にみられる精神発達の遅滞は、確率的影響に分類される。
(5)器官形成期の被ばくは、奇形を起こすおそれはないが、出生後、身体的な発育遅延が生じるおそれがある。


答え(2)
(1)は誤り。着床前期に被ばくして生き残った胎児には、被ばくによる影響は見られません。
(2)は正しい。胎内被ばくによる胎児への影響(奇形、精神発達遅滞や身体的発育遅滞など)は、確定的影響に分類されます。
(3)は誤り。奇形発生のおそれが最も大きいのは、器官形成期の被ばくです。
(4)は誤り。(2)の解答を参照してください。
(5)は誤り。器官形成期の被ばくは、奇形を起こすおそれがあります。また、身体的な発育遅延は、胎児期に被ばくすると生じるおそれがあります。

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