X線作業主任者の過去問の解説:生体(2021年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:生体(2021年4月)

ここでは、2021年(令和3年)4月公表の過去問のうち「エックス線の生体に与える影響に関する知識(問11~問20)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2021年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2021年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2021年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2021年4月)



問11 細胞の放射線感受性に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)細胞分裂の周期の中で、S期(DNA合成期)初期は、S期後期より放射線感受性が高い。
(2)細胞分裂の周期の中で、S期後期は、M期(分裂期)より放射線感受性が高い。
(3)細胞分裂の周期の中で、G1期(DNA合成準備期)初期は、G2期(分裂準備期)後期より放射線感受性が高い。
(4)細胞に放射線を照射したときの線量を横軸に、細胞の生存率を縦軸にとってグラフにすると、ほとんどの哺乳動物細胞では指数関数型となる。
(5)平均致死線量は、細胞の放射線感受性を表す指標として用いられ、その値が大きいほど、細胞の放射線感受性は高い。


答え(1)
(1)は正しい。細胞分裂は次のイラストの通り、G1期→S期→G2期→M期の順に進みます。
S期ではDNA量が2倍に増え、G2期を経て、M期で細胞が分裂し、G1期に戻ります。
このようにして細胞が増殖するのです。
問1イラスト
(2)は誤り。G1期の後期からS期の前期の放射線感受性が高く、M期が最も高くなっています。したがって、M期(分裂期)は、S期後期より放射線感受性が高いことになります。
(3)は誤り。G2期(分裂準備期)後期は、G1期(DNA合成準備期)初期より放射線感受性が高いです。
(4)は誤り。細胞に放射線を照射したとき、線量を横軸に、細胞の生存率を縦軸にとりグラフにすると、ヒトを含むほとんどの哺乳動物細胞ではシグモイド型となります。
(5)は誤り。平均致死線量の値が大きいと、細胞の放射線感受性は低く、逆にその値が小さいと、細胞の放射線感受性は高いことを意味します。

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エックス線作業主任者の予想問題



問12 放射線の生体影響などに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)酸素増感比(OER)は、酸素が存在しない状態と存在する状態とを比較し、同じ生物学的効果を与える線量の比で、酸素効果の大きさを表すものである。
(2)平均致死線量は、被ばくした集団のうち50%の個体が一定の期間内に死亡する線量である。
(3)半致死線量は、被ばくした集団の全ての個体が一定の期間内に死亡する最小線量の50%に相当する線量である。
(4)全致死線量は、半致死線量の2倍に相当する線量であり、この線量を被ばくした個体は数時間~数日のうちに死亡する。
(5)生物学的効果比(RBE)は、基準となる放射線と問題にしている放射線について、各々の同一線量を被ばくしたときの集団の生存率の比により、線質の異なる放射線の生物学的効果の大きさを比較したものである。


答え(1)
(1)は正しい。
(2)は誤り。「半致死線量」は、被ばくした集団のうち50%の個体が一定の期間内に死亡する線量です。
(3)は誤り。(2)の回答を参照してください。
(4)は誤り。全致死線量は、被ばくした集団中の個体の全数が死亡する線量の最低値です。
(5)は誤り。生物学的効果比(RBE)は、基準放射線と対象放射線の2種類の放射線が、同じ効果を与えるときの「吸収線量」の比で表されます。



問13 エックス線の直接作用と間接作用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)エックス線光子と生体内の水分子を構成する原子との相互作用の結果生成されたラジカルが、直接、生体高分子に損傷を与える作用が直接作用である。
(2)エックス線光子によって生じた二次電子が、生体高分子の電離又は励起を行うことによって、生体高分子に損傷を与える作用が間接作用である。
(3)エックス線のような低LET放射線が生体に与える影響は、直接作用によるものより間接作用によるものの方が大きい。
(4)生体中にシステイン、システアミンなどのSH基を有する化合物が存在すると放射線効果が軽減されることは、主に直接作用により説明される。
(5)溶液中の酵素の濃度を変えて一定線量のエックス線を照射するとき、酵素の濃度が減少するに従って酵素の全分子数のうち不活性化されたものの占める割合が増加することは、直接作用により説明される。


答え(3)
(1)は誤り。直接作用とは、エックス線などの放射線により生じた二次電子が、生体高分子の電離または励起を行い、生体高分子に損傷を与える作用です。
(2)は誤り。間接作用とは、エックス線などの放射線が生体内に存在する水分子と相互作用した結果、水分子が電離または励起してラジカルになり、そのラジカルが生体高分子に損傷を与える作用です。
(3)は正しい。
(4)は誤り。生体中にシステイン、システアミンなどのSH基を有する化合物(SH化合物)が存在すると、放射線効果が軽減されることを防護効果といい、「間接作用」でのみ説明できます。
(5)は誤り。これは「間接作用」によって説明することができます。



問14 エックス線被ばくによる末梢(しょう)血液中の血球の変化に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)被ばくにより骨髄中の幹細胞が障害を受けると、末梢血液中の血球数は減少していく。
(2)末梢血液中の血球数の変化は、250μGy程度の被ばくから認められる。
(3)末梢血液中の白血球のうち、リンパ球は他の成分より放射線感受性が高く、被ばく直後から減少が現れる。
(4)末梢血液中の血球のうち、被ばく後減少が現れるのが最も遅いものは赤血球である。
(5)末梢血液中の赤血球の減少は貧血を招き、血小板の減少は出血傾向を示す原因となる。


答え(2)
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。ヒトの末梢血液中の血球数の変化は、0.25Gy程度の被ばくから認められます。



問15 放射線による身体的影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)白内障は、眼の水晶体上皮の被ばくによる障害で、早期影響に分類される。
(2)放射線による皮膚障害のうち、脱毛は、潜伏期が6か月程度で、晩発影響に分類される。
(3)晩発影響の一つである白血病の潜伏期は、その他のがんに比べて長い。
(4)晩発影響には、その重篤度が、被ばく線量に依存するものとしないものがある。
(5)晩発影響に共通する特徴は、影響を発生させる被ばく線量に、しきい値が無いことである。


答え(4)
(1)は誤り。白内障は平均2~3年(半年から30年)という長い潜伏期を経て発症するので「晩発影響」に分類されます。
(2)は誤り。皮膚障害は、潜伏期が数週間以内と短く、すべて「早期影響」に分類されます。
(3)は誤り。放射線による発がんのうち、白血病は、その他がん(肺がんや胃がんなど)に比べて一般に潜伏期が「短い」ことで知られています。
(4)は正しい。
(5)は誤り。晩発影響には、しきい値がある確定的影響の症状(白内障など)と、しきい値がない確率的影響の症状(発がん)とがあります。



問16 放射線による遺伝的影響等に関する次のAからDの記述について、正しいものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 生殖細胞の突然変異には、遺伝子突然変異と染色体異常がある。
B 染色体異常は、正常な染色体の配列の一部が逆になることなどにより生じる。
C 胎内被ばくを受け、出生した子供にみられる発育遅滞は、遺伝的影響である。
D 放射線照射により、突然変異率を自然における値の2倍にする線量を倍加線量といい、ヒトでは約0.05Gyである。

(1)A,B
(2)A,B,C
(3)A,C
(4)A,D
(5)B,C,D


答え(1)
A,Bは正しい。
Cは誤り。胎児は個体としてみなされるため、胎内被ばくを受け、出生した子供にみられる発育遅滞などは、遺伝的影響ではなく身体的影響に分類されます。
Dは誤り。ヒトの倍加線量は、約1Gyと推定されています。



問17 ヒトが一時に全身にエックス線の照射を受けた場合の早期影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)2Gy以下の被ばくでは、放射線宿酔の症状が現れることはない。
(2)被ばくから死亡までの期間は、一般に、造血器官の障害による場合の方が、消化器官の障害による場合よりも長い。
(3)被ばくした全てのヒトが60日以内に死亡する線量の最小値は、約4Gyである。
(4)3~5Gy程度の被ばくによる死亡は、主に消化器官の障害によるものである。
(5)5~10Gy程度の被ばくによる死亡は、主に中枢神経系の障害によるものである。


答え(2)
(1)は誤り。「1Gy」の被ばくから放射線宿酔と呼ばれる症状が現れ、頭痛、倦怠感、吐き気、おう吐などを伴います。
(2)は正しい。
(3)は誤り。4Gyはヒトの半致死線量(LD50/60)で、この線量の被ばくでは、被ばくした人のうち「約半数(50%)の人」が、60日以内に、主に造血器官の障害により死亡します。
(4)は誤り。3~5Gyでは、「造血器官」の障害によって死亡し、これを骨髄死といいます。
(5)は誤り。5~10Gy程度の被ばくによる死亡は、主に「消化器官」の障害によるものです。



問18 次のAからCの人体の組織・器官について、放射線感受性の高いものから順に並べたものは(1)~(5)のうちどれか。

A リンパ組織
B 腎臓
C 毛のう

(1)A,B,C
(2)A,C,B
(3)B,A,C
(4)B,C,A
(5)C,A,B


答え(2)
Aリンパ組織は、リンパ球を含む組織のことで非常に感受性の高い組織です。
B腎臓(じんぞう)は、血液をろ過して尿を作る組織で、感受性は中程度の組織です。
C毛のうは、毛の根元を包み込んでいる組織で比較的感受性の高い組織です。
したがって、(2)A,C,Bが正解です。



問19 組織加重係数に関する次のAからDの記述のうち、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 組織加重係数は、各臓器・組織の確率的影響に対する相対的な放射線感受性を表す係数である。
B 組織加重係数が最も大きい組織・臓器は、脳である。
C 組織加重係数は、どの組織・臓器においても1より小さい。
D 被ばくした組織・臓器の平均吸収線量に組織加重係数を乗ずることにより、等価線量を得ることができる。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(2)
A,Cは正しい。
Bは誤り。組織加重係数が最も大きい組織・臓器は、骨髄(赤色)、結腸、肺、胃などです。
Dは誤り。組織加重係数を人体の各組織・臓器が受けた等価線量に乗じ、これらを合計することで、実効線量を得ることができます。



問20 胎内被ばくに関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)着床前期の被ばくでは、胚(はい)の死亡が起こることがあるが、被ばくしても生き残り、発育を続けて出生した子供には、被ばくによる影響はみられない。
(2)胎内被ばくのうち、奇形の発生するおそれが最も大きいのは、器官形成期の被ばくである。
(3)胎内被ばくのうち、出生後、精神発達遅滞を起こしやすいのは、胎児期の被ばくである。
(4)胎内被ばくにより胎児に生じる奇形は、確定的影響に分類される。
(5)胎内被ばくを受け出生した子供にみられる精神発達遅滞は、確率的影響に分類される。


答え(5)
(1)(2)(3)(4)は正しい。
(5)は誤り。胎内被ばくによる全ての障害は、しきい線量が存在しますので、「確定的影響」に分類されます。

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