X線作業主任者の過去問の解説:測定(2021年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:測定(2021年4月)

ここでは、2021年(令和3年)4月公表の過去問のうち「エックス線の測定に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2021年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2021年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2021年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2021年4月)



問1 エックス線の量に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)放射線に関する量は、その目的に応じて異なった量が定義されており、物理量、防護量及び実用量の三つの量に大別される。
(2)吸収線量は、物理量である。
(3)カーマは、防護量である。
(4)1cm線量当量は、実用量である。
(5)エックス線の放射線加重係数は、1である。


答え(3)
(1)(2)(4)(5)は正しい。
(3)は誤り。カーマは、「物理量」です。
主な放射線の量の分類を下記に示します。
問1表



問2 放射線に関連した量とその単位の組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。

(1)吸収線量 ……………… Gy
(2)線減弱係数 …………… m-1
(3)カーマ ………………… Gy
(4)粒子フルエンス ……… Gy/m2
(5)等価線量 ……………… Sv


答え(4)
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。粒子フルエンス(またはフルエンス)の単位は、m-2で、単位断面積を通過する放射線の粒子数を表します。



問3 放射線防護のための被ばく線量の算定に関する次のAからDの記述について、正しいものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 外部被ばくによる実効線量は、法令に基づき放射線測定器を装着した各部位の1cm線量当量及び70μm線量当量を用いて算定する。
B 皮膚の等価線量は、エックス線については70μm線量当量により算定する。
C 眼の水晶体の等価線量は、エックス線については1mm線量当量により算定する。
D 妊娠中の女性の腹部表面の等価線量は、腹・大腿(たい)部における1cm線量当量により算定する。

(1)A,B,D
(2)A,C
(3)A,C,D
(4)B,C
(5)B,D


答え(5)
B,Dは正しい。
Aは誤り。外部被ばくによる実効線量は、1cm線量当量により算定します。
Cは誤り。「眼の水晶体の等価線量の算定方法」について、法改正がありました。
【改正前】1cm線量当量又は70μm線量当量のうちいずれか適切なものにより算定
【改正後】1cm線量当量、3mm線量当量又は70μm線量当量のいずれか適切なものにより算定

改正日は令和2年4月1日で、施行日は令和3年4月1日です。
またこれに関連する他の内容についても改正されています。
施行日以降は、新基準での解答が求められますのでご注意ください。

【関連記事】法令改正による眼の被ばく限度の引き下げ等について



問4 放射線検出器とそれに関係の深い事項との組合せとして、正しいものは次のうちどれか。

(1)GM計数管 ……………………………… 電子なだれ
(2)比例計数管 …………………………… グロー曲線
(3)電離箱 ………………………………… 窒息現象
(4)シンチレーション検出器 …………… G値
(5)フリッケ線量計 ……………………… 充電


答え(1)
(1)は正しい。
(2)は誤り。比例計数管と関係の深い事項に、気体増幅(ガス増幅)、電子なだれなどがあります。また、グロー曲線は、熱ルミネセンス線量計と関係の深い事項です。
(3)は誤り。電離箱と関係の深い事項に、飽和領域、W値などがあります。また、窒息現象は、GM計数管と関係の深い事項です。
(4)は誤り。シンチレーション検出器と関係の深い事項に、光電子増倍管、蛍光作用などがあります。また、G値は、化学線量計と関係の深い事項です。
(5)は誤り。フリッケ線量計と関係の深い事項に、G値などがあります。また、充電は、電離箱式ポケット線量計と関係の深い事項です。



問5 気体の電離を利用する放射線検出器の印加電圧と生じる電離電流の特性に対応した次のAからDの領域について、出力電流の大きさが入射放射線による一次電離量に比例し、放射線の検出に利用される領域の組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 再結合領域
B 電離箱領域
C 比例計数管領域
D GM計数管領域

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(3)
A,Dは誤り。
Bは正しい。電離箱領域は、出力電流の大きさが入射放射線による一次電離量に比例し、一次電離量がそのまま検出信号となる領域です。
Cは正しい。比例計数管領域は、検出パルス信号の大きさが、一次電離量に比例する領域です。



問6 エックス線の測定に用いるNaI(Tl)シンチレーション検出器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)シンチレータに混入される微量のタリウムは、発光波長の調整や発光量増加の役割を果たす活性剤である。
(2)シンチレータにエックス線が入射すると、紫外領域の減衰時間の長い光が放射される。
(3)シンチレータから放射された光は、光電子増倍管の光電面で光電子に変換され、増倍された後、電流パルスとして出力される。
(4)光電子増倍管から得られる出力パルス波高には、入射エックス線のエネルギーの情報が含まれている。
(5)光電子増倍管の増倍率は印加電圧に依存するので、光電子増倍管の高圧電源は安定化する必要がある。


答え(2)
(1)(3)(4)(5)は正しい。
(2)は誤り。シンチレータにエックス線が入射すると、「可視領域」の減衰時間の「短い」光(蛍光)が放射されます。



問7 男性の放射線業務従事者が、エックス線装置を用い、肩から大腿(たい)部までを覆う防護衣を着用して放射線業務を行った。
労働安全衛生関係法令に基づき、胸部(防護衣の下)及び頭・頸(けい)部の2か所に放射線測定器を装着して、被ばく線量を測定した結果は、次の表のとおりであった。

問7表

この業務に従事した間に受けた外部被ばくによる実効線量の算定値に最も近いものは、(1)~(5)のうちどれか。
ただし、防護衣の中は均等被ばくとみなし、外部被ばくによる実効線量(HEE)は、次式により算出するものとする。

HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
Ha:頭・頸部における線量当量
Hb:胸・上腕部における線量当量
Hc:腹・大腿部における線量当量
Hm:「頭・頸部」「胸・上腕部」「腹・大腿部」のうち被ばくが最大となる部位における線量当量

(1)0.2mSv
(2)0.4mSv
(3)0.6mSv
(4)0.9mSv
(5)1.2mSv


答え(2)
この問題は、測定結果から「外部被ばくによる実効線量」を算定するものです。
もし全身に均等に被ばくする場合は、基本装着部位(男性は胸部、女性は腹部)に個人被ばく線量計を装着し、そこで測定した1cm線量当量を、外部被ばくによる実効線量とします。
しかし、今回は各部位で測定値が異なる不均等被ばくです。
このような場合の外部被ばくによる実効線量は次の式で算出できます。

HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
HEE:外部被ばくによる実効線量
Ha:頭・頸部における1cm線量当量
Hb:胸・上腕部における1cm線量当量
Hc:腹・大腿部における1cm線量当量
Hm:「頭・頸部」「胸・上腕部」「腹・大腿部」のうち外部被ばくによる実効線量が最大となるおそれのある部位における1cm線量当量

臓器・組織ごとに放射線リスクが異なる為、上記の式では、各部位で異なる係数を掛けることになっています。
また、各部位の1cm線量当量は、それぞれの部位に装着した個人被ばく線量計の測定値を用いることが原則ですが、測定されていない場合は、他の部位のうち最大の1cm線量当量を該当部位の1cm線量当量とします。
または、線量不明の部位にもっとも近い部位に装着された線量計による1cm線量当量と同程度であることが明らかな場合には、その近接部位の1cm線量当量を用います。
問題文では「防護衣の中は均等被ばくとみなし」とありますので、胸部と腹・大腿部の測定値は同程度となり、Hcには0.3を用います。
それぞれの値を代入して、外部被ばくによる実効線量を求めます。

HEE=0.08×1.2 + 0.44×0.3 + 0.45×0.3 + 0.03×1.2
 =0.399 ≒ 0.4mSv



問8 GM計数管式サーベイメータにより放射線を測定し、1,500cpsの計数率を得た。
GM計数管の分解時間が100μsであるとき、真の計数率(cps)に最も近い値は次のうちどれか。

(1)1,300
(2)1,450
(3)1,550
(4)1,650
(5)1,750


答え(5)
GM計数管式サーベイメータを用いて測定を行うと、分解時間内に数え落しが起こり、真の計数率(本当の計数率)と異なる値を示します。
真の計数率を求める公式は次の通りです。

M=m/(1-mt)

Mは真の計数率を、mは実測の計数率を、tは分解時間を表します。
それでは、問題文の数値を公式に代入して、計算していきましょう。

分解時間の100μsを、秒に直すと0.0001sです。

M=1,500[cps]/(1-1,500[cps]×0.0001[s])≒1,765[cps]

真の計数率は、約1,765cpsだとわかりました。
選択肢の中で最も近い値、(5)1,750が正解です。



問9 放射線の測定などの用語に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)気体に放射線を照射したとき、1個のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値といい、これは気体の種類によって異なる値となり、また同じ気体中では放射線のエネルギーにあまり依存しない。
(2)半導体検出器において、荷電粒子が半導体中で1個の電子・正孔対を作るのに必要な平均エネルギーをε値といい、シリコンの場合は約3.6eV程度である。
(3)線量率計の検出感度が、放射線のエネルギーによって異なる性質をエネルギー依存性という。
(4)測定器の指針が安定せず、ゆらぐ現象をフェーディングという。
(5)GM計数管の特性曲線において、印加電圧を上げても計数率がほとんど変わらない範囲をプラトーといい、プラトーが長く、傾斜が小さいほど、計数管としての性能は良い。


答え(4)
(1)(2)(3)(5)は正しい。
(4)は誤り。積分型の測定器において、放射線が入射して作用した時点からの時間経過とともに、線量の読取り値が減少していくことをフェーディングといいます。



問10 熱ルミネッセンス線量計(TLD)と蛍光ガラス線量計(RPLD)に関する次のAからDの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 素子として、TLDではフッ化リチウム、硫酸カルシウムなどが、RPLDでは銀活性リン酸塩ガラスが用いられる。
B 線量読み取りのための発光は、TLDでは加熱により、RPLDでは紫外線照射により行われる。
C 線量の読み取りは、TLDでは何度でも繰り返し行うことができるが、RPLDでは線量を読み取ると素子から情報が消失してしまうため、1回しか行うことができない。
D RPLDの素子は1回しか使用することができないが、TLDの素子はアニーリング処理を行うことにより、再度使用することができる。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(1)
A,Bは正しい。
Cは誤り。線量の読み取りは、「RPLD」では何度でも繰り返し行うことができます。一方、「TLD」では線量を読み取ると素子から情報が消失してしまうため、1回しか行うことができません。
Dは誤り。RPLD、TLDの素子は、どちらもアニーリング処理を行うことにより、再度使用することができます。

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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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