X線作業主任者の過去問の解説:測定(2018年10月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

0742-93-4303

受付時間 10時~19時(土日祝休み)

X線作業主任者の過去問の解説:測定(2018年10月)

ここでは、2018年(平成30年)10月公表の過去問のうち「エックス線の測定に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2018年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2018年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2018年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2018年10月)



問1 放射線の量とその単位に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)吸収線量は、電離放射線の照射により単位質量の物質に付与されたエネルギーであり、単位としてGyが用いられる。
(2)カーマは、電離放射線の照射により、単位質量の物質中に生成された荷電粒子の電荷の総和であり、単位としてGyが用いられる。
(3)等価線量は、人体の特定の組織・臓器当たりの吸収線量に、放射線の種類とエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたもので、単位としてSvが用いられる。
(4)実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に、各組織・臓器の相対的な放射線感受性を示す組織加重係数を乗じ、これらを合計したもので、単位としてSvが用いられる。
(5)eV(電子ボルト)は、放射線のエネルギーの単位として用いられ、1eVは約1.6×10-19Jに相当する。


答え(2)
放射線の量は、いろいろな種類があるので難しいですね。
下記イラストを見て、大体のイメージをつかんで下さい。

(1)は正しい。吸収線量は、あらゆる種類の放射線で使用できる量です。
(2)は誤り。カーマは、間接電離放射線で使用できる量です。また、「電荷の総和」ではなく、「エネルギーの総和」です。

問1解説図1

(3)は正しい。等価線量は、吸収線量に放射線加重係数を掛けて求めます。
(4)は正しい。実効線量は、各組織の等価線量に組織加重係数を掛けて、合計して求めます。

問1解説図2

(5)は正しい。eV(電子ボルト)は、エネルギーの単位であることは覚えておきましょう。

問1解説図3



問2 GM計数管に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)GM計数管の内部には電離気体として用いられる空気のほか、放射線によって生じる放電を短時間で消滅させるための消滅(クエンチング)ガスとしてアルゴンなどの希ガスが混入されている。
(2)回復時間は、入射放射線により一度放電し、一時的に検出能力が失われた後、パルス波高が弁別レベルまで回復するまでの時間で、GM計数管が測定できる最大計数率に関係する。
(3)プラトーが長く、その傾斜が大きいプラトー特性のGM計数管は、一般に性能が優れている。
(4)GM計数管は、プラトー部分の中心部より高い印加電圧で使用する。
(5)GM計数管では、入射放射線のエネルギーを分析することができない。


答え(5)
(1)は誤り。GM計数管の内部の電離気体としてアルゴンが用いられています。それ以外に放電を短時間で消滅させるために、消滅(クエンチング)ガスが入れられています。消滅ガスとしては、微量のアルコール蒸気やハロゲンガスなどが一般的です。
(2)は誤り。「回復時間」ではありません。『分解時間』は、入射放射線により一度放電し、一時的に検出能力が失われた後、パルス波高が弁別レベルまで回復するまでの時間です。また、分解時間は、GM計数管が測定できる最大計数率に関係しています。
(3)は誤り。プラトーは、なだらかな丘を意味しますが、プラトーが長く、その傾斜が『小さい』プラトー特性のGM計数管の方が、性能が優れています。
(4)は誤り。プラトーの始まりから3分の1程度の印加電圧で使用します。これは管内のガスの劣化を遅らせるためです。
(5)は正しい。GM計数管は、管内に入ってきた放射線のエネルギーとは無関係に一定の大きさの出力パルスが得られます。よって、エネルギー分析はできません。



問3 熱ルミネセンス線量計(TLD)と蛍光ガラス線量計(RPLD)とを比較した次のAからDの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A TLDの方が、RPLDより素子間の感度のばらつきが少なく、フェーディングも小さい。
B 線量を読み取るための発光は、TLDでは加熱により、RPLDでは紫外線照射により行われる。
C 線量の読み取りは、RPLDでは繰り返し行うことができるが、TLDでは線量を読み取ることによって素子から情報が消失してしまうため、1回しか行うことができない。
D TLDの素子は1回しか使用することができないが、RPLDの素子は、使用後加熱処理を行うことにより、再度使用することができる。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(3)
Aは誤り。TLDの素子は、粉末結晶をガラス内に封入したものなどがあり、その均質性よって感度に若干のばらつきがあるため、素子ごとに校正が必要になります。また、TLDの方が、RPLDよりフェーディングが大きいことで知られています。
Bは正しい。TLD→加熱、RPLD→紫外線照射は、確実に覚えておきましょう。
Cは正しい。TLDでは、素子に放射線が当たると、エネルギーが蓄積されます。そこに熱を加えることでそのエネルギーが解放されて、光が出てきますが、蓄積されたエネルギーは消去されることになります。
Dは誤り。TLDとRPLDは、共にアニーリング(加熱処理)により再使用することができます。



問4 積分回路の時定数Τ秒のサーベイメータを用いて、線量を測定し、計数率n(cps)を得たとき、計数率の標準偏差σ(cps)は

問4解説図1

で示される。
あるサーベイメータを用いて、時定数を2.5秒に設定し、エックス線を測定したところ、指示値は500(cps)を示した。
このとき、計数率の相対標準偏差に最も近い値は次のうちどれか。

(1)1%
(2)2%
(3)3%
(4)5%
(5)10%


答え(2)
標準偏差σ(シグマ)は、値のバラツキを表す指標です。
また、相対標準偏差は、バラツキの程度を表す指標で、標準偏差σを元の平均値(ここでは指示値)で割り、100を掛けて百分率で表したものです。

問4解説図2

上式に、問題文の指示値500(cps)と時定数2.5秒を代入します。

問4解説図3

したがって、(2)2%が正解です。



問5 放射線の測定の用語に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)半導体検出器において、放射線が半導体中で1個の電子・正孔対を作るのに必要な平均エネルギーをε値といい、シリコン結晶の場合は、約3.6eVである。
(2)GM計数管の動作特性曲線において、プラトー領域の印加電圧では、入射エックス線による一次電離量に比例した大きさの出力パルスが得られる。
(3)気体に放射線を照射したとき、1個のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値といい、気体の種類にあまり依存せず、放射線のエネルギーに応じてほぼ一定の値をとる。
(4)線量率計の積分回路の時定数は、線量率計の指示の即応性に関係した定数で、時定数の値を小さくすると、指示値の相対標準偏差は小さくなるが、応答速度は遅くなる。
(5)測定器の指針が安定せず、ゆらぐ現象をフェーディングという。


答え(1)
(1)は正しい。正孔とは、放射線が原子に当たって飛び出した電子の穴のことです。飛び出した電子と正孔をセットで電子・正孔対といいます。
(2)は誤り。GM計数管は、管内で多数の紫外線が発生し、その紫外線が一次電離とは無関係のところで電離を起こします。したがって、GM計数管は、入射エックス線による一次電離量に『無関係』に一定の大きさの出力パルスが得られます。
(3)は誤り。イオン対とは、放射線が原子に当たって飛び出した「電子」と電子が飛び出した後の原子である「陽イオン」のセットのことです。1個のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値といいます。W値は、『放射線のエネルギー』にあまり依存せず、『気体の種類』に応じてほぼ一定の値をとります。
(4)は誤り。時定数の値を変えると、機器の応答速度が変わります。時定数の値を小さくすると、指示値の相対標準偏差(バラツキの程度)は『大きく』なり、応答速度は『速く』なります。
(5)は誤り。フェーディングとは、個人被ばく線量計の素子などが、放射線のエネルギーを蓄積した状態から時間が経つと、いざ線量を読み取るときに読み取り値が少なくなってしまう現象です。



問6 気体の電離を利用する放射線検出器の印加電圧と生じる電離電流の特性に対応した次のAからDの領域について、気体(ガス)増幅が生じ、検出器として利用されているものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 再結合領域
B 電離箱領域
C 比例計数管領域
D GM計数管領域

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(5)
下図は印加電圧(検出器に加える電圧)と検出器で発生する電子・イオン対の発生量を表したものです。
電圧の範囲ごとに名称があり、放射線検出器は適切な電圧の範囲で使用します。

問6解説図1

この中で気体増幅を利用している領域は、比例計数管領域とGM計数管領域です。



問7 次のエックス線とその測定に用いるサーベイメータの組合せのうち、不適切なものはどれか。

(1)散乱線を多く含むエックス線
  ……… 電離箱式サーベイメータ
(2)0.1μSv/h程度の低線量率のエックス線
  ……… シンチレーション式サーベイメータ
(3)200mSv/h程度の高線量率のエックス線
  ……… 電離箱式サーベイメータ
(4)湿度の高い場所における100μSv/h程度のエックス線
  ……… GM計数管式サーベイメータ
(5)10keV程度の低エネルギーのエックス線
  ……… 半導体式サーベイメータ


答え(5)
(1)は正しい。電離箱式サーベイメータは、方向依存性が小さいので、散乱線を多く含むエックス線の測定に適しています。
(2)は正しい。シンチレーション式サーベイメータは、自然環境中の微弱な放射線測定も可能で、0.1μSv/h程度の低線量率のエックス線の測定に適しています。
(3)は正しい。電離箱式サーベイメータは、広範囲の線量測定が可能で、200mSv/h程度の高線量率のエックス線の測定にも適しています。
(4)は正しい。GM計数管式サーベイメータは、湿度の影響をあまり受けることなく取扱い易いので、湿度の高い場所での使用に適しています。また、高線量率の測定では窒息現象が起こり、測定できなくなりますが、選択肢のような100μSv/h程度のエックス線の測定は可能です。
(5)は不適切。半導体式サーベイメータは、30keV以下の低エネルギーのエックス線の測定には向いていません。



問8 あるエックス線について、サーベイメータの前面に鉄板を置き、半価層を測定したところ2.0mmであった。
このエックス線のエネルギーとして最も近いものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、エックス線のエネルギーと鉄の質量減弱係数との関係は下図のとおりとし、loge2=0.693とする。
また、この鉄板の密度は7.8g/cm3とする。

問8解説図1

(1)60keV
(2)70keV
(3)80keV
(4)90keV
(5)110keV


答え(4)
この問題は、鉄板の質量減弱係数を求めて、そこからエックス線のエネルギーを推定するものです。
問題文にはlog(対数)がありますが、今回はlog(対数)を使わない計算を行います。
この問題で必要な公式は、次のとおりです。

①減弱係数[cm-1]=0.693/半価層[cm]
②質量減弱係数[cm2/g]=減弱係数[cm-1]÷密度[g/cm3]

まず①の公式を使って鉄板の減弱係数を求めます。
なお、鉄板の半価層2.0mmは、0.2cmに単位を直して計算します。

減弱係数[cm-1]=0.693/0.2[cm]
 =3.465[cm-1]

続いて、②の公式を使って鉄板の質量減弱係数を求めます。

質量減弱係数[cm2/g]=3.465[cm-1]÷7.8[g/cm3]
 ≒0.44[cm2/g]

図の質量減弱係数0.44cm2/gのところを読むと、このエックス線のエネルギーとして最も近いものは、(4)90keVだとわかります。



問9 個人被ばく線量測定のための放射線測定器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)フィルムバッジは、写真乳剤を塗付したフイルムを現像したときの黒化度により被ばく線量を評価する測定器で、数種類のフィルタを通したフイルムの濃度の変化から、放射線の実効エネルギーを推定することができる。
(2)光刺激ルミネセンス(OSL)線量計は、銀活性リン酸塩ガラスを素子とし、放射線により生成された蛍光中心に紫外線を当て、発生する蛍光を測定する線量計である。
(3)電離箱式PD型ポケット線量計は、充電により先端がY字状に開いた石英繊維が、放射線の入射により閉じてくることを利用した線量計である。
(4)半導体式ポケット線量計は、固体内での放射線の電離作用を利用した線量計で、検出器としてPN接合型シリコン半導体が用いられている。
(5)電荷蓄積式(DIS)線量計は、電荷を蓄積する不揮発性メモリ素子(MOSFETトランジスタ)を電離箱の構成要素の一部とした線量計で、線量の読み取りは専用のリーダを用いて行う。


答え(2)
(2)は誤り。光刺激ルミネセンス線量計の素子として、炭素添加酸化アルミニウムが用いられます。また、線量を読み取るための発光は、緑色のレーザー光線照射により行われます。
(1)(3)(4)(5)は正しい。



問10 エックス線の測定に用いるNaI(Tl)シンチレーション検出器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)シンチレータとして用いられるヨウ化ナトリウム結晶は、微量のタリウムを含有させて活性化されている。
(2)シンチレータにエックス線が入射すると、可視領域の減衰時間の短い光が放射される。
(3)シンチレータから放射された光は、光電子増倍管の光電面で光電子に変換され、増倍された後、電流パルスとして出力される。
(4)光電子増倍管から得られる出力パルス波高は、入射エックス線の線量率に比例する。
(5)光電子増倍管の増倍率は、印加電圧に依存するので、光電子増倍管に印加する高圧電源は安定化する必要がある。


答え(4)
(4)は誤り。光電子増倍管から得られる出力パルス波高は、入射エックス線の『エネルギー』に比例します。よって、シンチレーション検出器では、エネルギー分析ができます。
(1)(2)(3)(5)は正しい。

講師のご紹介

講師写真

はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
実務4年!講師14年!の実績があり、合格まで徹底サポートいたします!
いつでもお気軽にお問い合わせ下さい。私が対応いたします。
講師プロフィール
著書はこちら

サイドカバーデザイン
サイドバー電話
サイドバーメール
サイドバービデオ2022年版
サイドバービデオ2023年
サイドバー決済方法
上に戻る