X線作業主任者の過去問の解説:生体(2020年10月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:生体(2020年10月)

ここでは、2020年(令和2年)10月公表の過去問のうち「エックス線の生体に与える影響に関する知識(問11~問20)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2020年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2020年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2020年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2020年10月)



問11 放射線感受性に関する次の記述のうち、ベルゴニー・トリボンドーの法則に従っていないものはどれか。

(1)リンパ球は、骨髄中だけでなく、末梢(しょう)血液中においても感受性が高い。
(2)皮膚の基底細胞層は、角質層より感受性が高い。
(3)小腸の腺窩(か)細胞(クリプト細胞)は、絨(じゅう)毛先端部の細胞より感受性が高い。
(4)骨組織は、一般に放射線感受性が低いが、小児では比較的高い。
(5)脳の神経組織の放射線感受性は、成人では低いが、胎児では高い時期がある。


答え(1)
(1)は法則に従っていない。
ベルゴニー・トリボンドーの法則は、生物の放射線影響の受けやすさを表す法則です。
法則の一つに、「形態および機能において未分化なものほど放射線感受性が高い」があります。
しかし、リンパ球は骨髄中の未分化(未熟)なものだけでなく、成熟した後も感受性が高いことが知られています。
(2)(3)(4)(5)は法則に従っている。



問12 組織加重係数に関する次のAからDの記述のうち、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 組織加重係数は、各臓器・組織の確率的影響に対する相対的な放射線感受性を表す係数である。
B 組織加重係数が最も大きい組織・臓器は、脳である。
C 組織加重係数は、どの組織・臓器においても1より小さい。
D 被ばくした組織・臓器の平均吸収線量に組織加重係数を乗ずることにより、等価線量を得ることができる。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(2)
A正しい。組織加重係数は、確率的影響(発がんなど)のリスクを考慮して導き出されたものです。
Bは誤り。組織加重係数が最も大きい組織・臓器は、赤色骨髄(血液を作っている組織)などでその係数は、0.12となっています。脳の係数は、0.01です。
Cは正しい。組織加重係数は、すべてを足し合わせると1になります。
Dは誤り。組織加重係数を人体の各組織・臓器が受けた等価線量に乗じ、これらを合計することで、実効線量を得ることができます。



問13 放射線の被ばくによる確率的影響及び確定的影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)確率的影響では、被ばく線量と影響の発生確率の関係がS字状曲線で示される。
(2)確定的影響では、被ばく線量の増加とともに影響の発生確率は増加するが、障害の重篤度は変わらない。
(3)胎内被ばくにより胎児に生じる奇形は、確率的影響に分類される。
(4)実効線量は、確率的影響を評価するための量である。
(5)確率的影響の発生を完全に防止することは、放射線防護の目的の一つである。


答え(4)
(1)は誤り。「確定的影響」では、被ばく線量と影響の発生確率の関係がS字状曲線(シグモイド曲線)で示されます。
(2)は誤り。「確率的影響」では、被ばく線量の増加とともに影響の発生確率は増加しますが、障害の重篤度は変わりません。
(3)は誤り。胎内被ばくにより胎児に生じる奇形は、しきい線量がありますので、「確定的影響」に分類されます。
(4)は正しい。
(5)は誤り。「確定的影響」は、被ばく線量をしきい線量以下に抑えれば障害が発生しません。したがって、「確定的影響」では、その発生を防止することが、放射線防護の目的の一つになります。



問14 放射線被ばくによる造血器官及び血液に対する影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)末梢(しょう)血液中の、リンパ球以外の白血球は、被ばく直後一時的に増加することがある。
(2)造血器官である骨髄のうち、脊椎の中にあり、造血幹細胞の分裂頻度が極めて高いものは脊髄である。
(3)人の末梢血液中の血球数の変化は、被ばく量が1Gy程度までは認められない。
(4)末梢血液中の血球のうち、被ばく後減少が現れるのが最も遅いものは血小板である。
(5)末梢血液中の赤血球の減少は貧血を招き、血小板の減少は感染に対する抵抗力を弱める原因となる。


答え(1)
(1)は正しい。末梢血液中のリンパ球以外の白血球が一時的に増加するのは、ある組織が一時的に収縮して、末梢血液中に血球がしぼり出されるのが原因です。
(2)は誤り。脊椎(せきつい)とは背骨のことです。その中にある脊髄(せきずい)は神経の束で、脳からの命令を手足に伝える幹線道路的な役割をしています。つまり、脊髄では、血液は作られません。
(3)は誤り。人の末梢血液中の血球数の変化は、被ばく量が「0.25Gy」程度で認められます。
(4)は誤り。被ばく後、末梢血液中の血球は、リンパ球→白血球(リンパ球を除く)→血小板→赤血球の順で減少します。
(5)は誤り。赤血球の減少は貧血を招きますが、血小板の減少は出血傾向(出血しやすくなる)がみられるようになります。



問15 ヒトが一時に全身にエックス線の照射を受けた場合の早期影響に関する次のAからDの記述について、正しいものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 1~2Gy程度の被ばくで、放射線宿酔の症状が現れることはない。
B 被ばくから死亡までの期間は、一般に消化器官の障害による場合の方が、造血器官の障害による場合より短い。
C 3~5Gy程度の被ばくによる死亡は、主に造血器官の障害によるものである。
D 半致死線量(LD50/60)に相当する線量の被ばくによる死亡は、主に消化器官の障害によるものである。

(1)A,B
(2)A,C
(3)B,C
(4)B,D
(5)C,D


答え(3)
Aは誤り。放射線宿酔の症状(頭痛、倦怠感、吐き気など)は、1Gy程度の被ばくで現れます。
Dは誤り。半致死線量に相当する線量(4Gy)の被ばくによる死亡は、主に「造血器官」の障害によるものです。
B,Cは正しい。



問16 放射線によるDNAの損傷と修復に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)DNA損傷には、塩基損傷とDNA鎖切断があるが、エックス線のような間接電離放射線では、塩基損傷は生じない。
(2)DNA鎖切断のうち、二重らせんの両方が切れる2本鎖切断の発生頻度は、片方だけが切れる1本鎖切断の発生頻度より高い。
(3)細胞には、DNA鎖切断を修復する機能があり、修復が誤りなく行われれば細胞は回復し、正常に増殖を続けるが、塩基損傷を修復する機能はない。
(4)DNA2本鎖切断の修復方式のうち、非相同末端結合修復は、DNA切断端どうしを直接結合する方式であるため、誤りなく行われる。
(5)DNA鎖切断のうち、1本鎖切断は2本鎖切断に比べて修復されやすい。


答え(5)
(1)は誤り。エックス線でも、塩基損傷とDNA鎖切断が生じます。
(2)は誤り。2本鎖切断の発生頻度は、1本鎖切断の発生頻度より「低い」です。
(3)は誤り。塩基損傷を修復する機能もあります。塩基損傷は、主に除去修復機構により修復されます。
(4)は誤り。非相同末端結合は、DNA切断端同士を直接再結合する修復ですが、DNA配列が失われるため、誤りが多い修復方式です。
(5)は正しい。



問17 次のAからCの人体の組織・器官について、放射線感受性の高いものから順に並べたものは(1)~(5)のうちどれか。

A リンパ組織
B 腎臓
C 毛のう

(1)A,B,C
(2)A,C,B
(3)B,A,C
(4)B,C,A
(5)C,A,B


答え(2)
Aリンパ組織は、リンパ球を含む組織のことで非常に感受性の高い組織です。
B腎臓(じんぞう)は、血液をろ過して尿を作る組織で、感受性は中程度の組織です。
C毛嚢(もうのう)は、毛の根元を包み込んでいる組織で比較的感受性の高い組織です。
したがって、(2)A,C,Bが正解です。



問18 放射線による遺伝的影響に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)生殖腺が被ばくしたときに生じる障害は、全て遺伝的影響である。
(2)親の体細胞に突然変異が生じると、子孫に遺伝的影響が生じる。
(3)胎児期に被ばくし、成長した子供には、その後に遺伝的影響を起こすことはない。
(4)遺伝的影響は、確定的影響に分類される。
(5)倍加線量は、放射線による遺伝的影響を推定する指標とされ、その値が大きいほど遺伝的影響は起こりにくい。


答え(5)
(1)は誤り。生殖腺が被ばくしたときに生じる障害には、「遺伝的影響」のほか、不妊などの「身体的影響」があります。
(2)は誤り。親の「生殖細胞」に突然変異が生じると、子孫に遺伝的影響が生じおそれがあります。
(3)は誤り。「着床前期」に被ばくし、胚の死亡が起こらずに成長した子供には、被ばくによる影響は見られません。
(4)は誤り。遺伝的影響は、「確率的影響」に分類される。
(5)は正しい。



問19 放射線による生物学的効果に関する次の現象のうち、放射線の間接作用によって説明することができないものはどれか。

(1)生体中に存在する酸素の分圧が高くなると放射線の生物学的効果は増大する。
(2)温度が低下すると放射線の生物学的効果は減少する。
(3)生体中にシステイン、システアミンなどのSH基をもつ化合物は、放射線の生物学的効果を軽減させる。
(4)溶液中の酵素の濃度を変えて一定線量の放射線を照射するとき、不活性化される酵素の分子数は、酵素の濃度が高くなると増加する。
(5)溶液中の酵素の濃度を変えて一定線量の放射線を照射するとき、酵素の濃度が減少するに従って、酵素の全分子数のうち、不活性化される分子の占める割合は増大する。


答え(4)
(1)は間接作用によって説明できる。酸素効果です。
(2)は間接作用によって説明できる。温度効果です。
(3)は間接作用によって説明できる。防護効果です。
(4)は間接作用によって説明できない。これは直接作用によって説明できることです。
(5)は間接作用によって説明できる。



問20 次のAからDの放射線による身体的影響について、その発症にしきい線量が存在するものの全ての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 白血病
B 永久不妊
C 放射線宿酔
D 再生不良性貧血

(1)A,B,D
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,C
(5)B,C,D


答え(5)
A白血病は、血液のがんといわれています。発がんは確率的影響なのでしきい線量が存在しません。
B永久不妊、C放射線宿酔、D再生不良性貧血は、確定的影響なのでしきい線量が存在します。

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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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