X線作業主任者の過去問の解説:管理(2020年10月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:管理(2020年10月)

ここでは、2020年(令和2年)10月公表の過去問のうち「エックス線の管理に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2020年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2020年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2020年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2020年10月)



問1 エックス線管及びエックス線の発生に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)エックス線管の内部は、効率的にエックス線を発生させるため、高度の真空になっている。
(2)陰極で発生する熱電子の数は、フィラメント電流を変えることで制御される。
(3)陽極のターゲットはエックス線管の軸に対して斜めになっており、加速された熱電子が衝突しエックス線が発生する領域である実焦点は、これをエックス線束の利用方向から見た実効焦点よりも小さくなる。
(4)連続エックス線の発生効率は、ターゲット元素の原子番号と管電圧の積に比例する。
(5)管電圧がターゲット元素に固有の励起電圧を超える場合、発生するエックス線は、制動放射による連続エックス線と特性エックス線が混在したものになる。


答え(3)
(3)は誤り。実焦点よりも、実効焦点の方が「小さく」なるようにしてあります。
透過写真撮影では、実効焦点の寸法が小さいほど、像質のよい(細部が鮮明に写っている)写真を撮影できます。
下記のイラストでは、下の方がエックス線束の利用方向です。
現在は、焦点が数μmの大きさのマイクロフォーカスX線源が搭載された装置も利用されています。
(1)(2)(4)(5)は正しい。

問1図



問2 あるエックス線装置のエックス線管の焦点から1m離れた点における1cm線量当量率は12mSv/minであった。
このエックス線装置を用い、厚さ8mmの鋼板及び厚さ40mmのアルミニウム板にそれぞれ別々に照射したところ、透過したエックス線の1cm線量当量率はいずれも3mSv/minであった。
厚さ10mmの鋼板と厚さ30mmのアルミニウム板を重ね合わせ40mmとした板に照射した場合、透過後の1cm線量当量率の値として、最も近いものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、エックス線は細い線束とし、測定点はいずれもエックス線管の焦点から1m離れた点とする。
また、鋼板及びアルミニウム板を透過した後の実効エネルギーは、透過前と変わらないものとし、散乱線による影響は無いものとする。

(1)0.1mSv/min
(2)0.4mSv/min
(3)0.8mSv/min
(4)1.2mSv/min
(5)1.6mSv/min


答え(3)
この問題は、鋼板とアルミニウム板という2種類の異なる板を重ね合わせて、そこにエックス線を照射したときの透過後の線量率を求めるものです。

まず、次の減弱の式を使って、鋼板とアルミニウム板の半価層hを計算します。
I=I0(1/2)x/h

先に、鋼板の半価層hです。

3[mSv/min]=12[mSv/min](1/2)8[mm]/h[mm]
3[mSv/min]/12[mSv/min]=(1/2)8[mm]/h[mm]
1/4=(1/2)8[mm]/h[mm]
(1/2)2=(1/2)8[mm]/h[mm]

指数の部分を抜き出して計算します。

2=8[mm]/h[mm]
h[mm]=4[mm]…鋼板

次に、アルミニウム板の半価層hです。

3[mSv/min]=12[mSv/min](1/2)40[mm]/h[mm]
3[mSv/min]/12[mSv/min]=(1/2)40[mm]/h[mm]
1/4=(1/2)40[mm]/h[mm]
(1/2)2=(1/2)40[mm]/h[mm]

指数の部分を抜き出して計算します。

2=40[mm]/h[mm]
h[mm]=20[mm]…アルミニウム板

2種類の異なる板を重ね合わせたときの減弱の式は次のようになります。
I=I0(1/2)x/h×(1/2)x/h

先の「(1/2)x/h」が鋼板の減弱を、後の「(1/2)x/h」がアルミニウム板の減弱を意味します。
それでは問題文の板の厚さの値と先ほど求めた半価層の値を代入して計算していきます。

I[mSv/min]=12[mSv/min](1/2)10[mm]/4[mm]×(1/2)30[mm]/20[mm]
I[mSv/min]=12[mSv/min](1/2)5[mm]/2[mm]×(1/2)3[mm]/2[mm]

このような形になると、指数の部分は足し算になります。

I[mSv/min]=12[mSv/min](1/2)5[mm]/2[mm]+3[mm]/2[mm]
I[mSv/min]=12[mSv/min](1/2)8[mm]/2[mm]
I[mSv/min]=12[mSv/min](1/2)4
I[mSv/min]=12[mSv/min](1/2)×(1/2)×(1/2)×(1/2)
I[mSv/min]=12[mSv/min](1/16)
I[mSv/min]=0.75[mSv/min]

したがって、透過後の1cm線量当量率の値として、最も近いものは(3)0.8mSv/minとなります。



問3 エックス線装置の管電流を一定にして、管電圧を増加させた場合に、発生する連続エックス線に認められる変化として、誤っているものは次のうちどれか。

(1)最大エネルギーは、高くなる。
(2)最高強度を示す波長は、短くなる。
(3)線質は、硬くなる。
(4)最短波長は、管電圧に反比例して短くなる。
(5)全強度は、管電圧に比例して大きくなる。


答え(5)
エックス線は、その発生方法の違いによって二つに分けられます。
一つは「連続エックス線」、もう一つは「特性エックス線」です。
これらエックス線は、管電流や管電圧を変えることで、その性質が変化します。
ここでは、問題文の通り「管電流を一定にして、管電圧を増加させた場合」の「連続エックス線」の性質の変化について問われています。
(1)は正しい。
(2)は正しい。
(3)は正しい。「線質が硬くなる」とは、発生する連続エックス線のエネルギーが大きくなることを意味しており、硬化するともいいます。
選択肢(1)の通り、管電圧を増加させた場合、最大エネルギーが高くなりますので、線質が硬くなることはイメージできますね。
(4)は正しい。
(5)は誤り。連続エックス線の全強度(発生しているエックス線の量)は、管電圧の2乗に比例して大きくなります。
「2乗」という表記が抜けています。



問4 エックス線を利用した各種試験装置に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)蛍光エックス線分析装置は、蛍光体を塗布した板の上に、物質を透過したエックス線を当てたときにできる蛍光像を観察することによって、物質の欠陥の程度などを識別する装置である。
(2)エックス線マイクロアナライザーは、細く絞った電子線束を試料の微小部分に照射し、発生する特性エックス線を分光することによって、微小部分の元素を分析する装置である。
(3)エックス線回折装置は、結晶質の物質にエックス線を照射すると特有の回折像が得られることを利用して、物質の結晶構造を解析し、物質の性質を調べる装置である。
(4)エックス線応力測定装置は、応力による結晶の面間隔の変化をエックス線の回折を利用して調べることにより、物質内の残留応力の大きさを測定する装置である。
(5)エックス線透過試験装置は、エックス線が物質を透過する性質を利用して透過試験を行う装置で、フィルムを使って透過写真を撮影するものなどがある。


答え(1)
(1)は誤り。蛍光エックス線分析装置は、白色(連続)エックス線を試料に照射して、発生する蛍光エックス線の性質を調べ、試料の定性、定量分析を行う装置です。
定性分析とは、どのような元素が入っているか見分けることで、定量分析とは、その元素が全体の何%を占めているかを見分けることです。
(2)(3)(4)(5)は正しい。



問5 単一エネルギーで太い線束のエックス線が物質を透過するときの減弱及び再生係数(ビルドアップ係数)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)再生係数は、入射エックス線の線量率が高くなるほど小さくなる。
(2)再生係数は、物質への照射面積が大きいほど大きくなる。
(3)再生係数は、物質の厚さが薄くなるほど小さくなる。
(4)再生係数は、透過後、物質から離れるほど小さくなり、その値は1に近づく。
(5)太い線束のエックス線では、散乱線が加わるため、細い線束のエックス線より減弱曲線の勾配は緩やかになり、見かけ上、減弱係数が小さくなる。


答え(1)
(1)は誤り。再生係数は、線量率(時間あたりに発生しているエックス線の量)の影響を受けません。
再生係数の値に影響を与える要因として、「物質への照射面積」「物質の厚さ」「物質の種類」「入射エックス線のエネルギー」があります。
(2)(3)(4)(5)は正しい。



問6 エックス線と物質との相互作用に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)入射エックス線のエネルギーが中性子1個の静止質量に相当するエネルギー以上になると、電子及び陽電子を生じる電子対生成が起こるようになる。
(2)コンプトン効果とは、エックス線光子と原子の軌道電子とが衝突し、電子が原子の外に飛び出し、光子が運動の方向を変える現象である。
(3)コンプトン効果による散乱エックス線は、入射エックス線のエネルギーが高くなるほど前方に散乱されやすくなる。
(4)光電効果とは、原子の軌道電子がエックス線光子のエネルギーを吸収して原子の外に飛び出し、光子が消滅する現象である。
(5)光電効果が起こる確率は、エックス線のエネルギーが高くなるほど低下する。


答え(1)
(1)は誤り。入射エックス線のエネルギーが「電子2個」の静止質量に相当するエネルギー以上になると、電子及び陽電子を生じる電子対生成が起こるようになります。
電子対生成では、「電子」とその反粒子である「陽電子」の2個が作られるので、「電子2個」以上の入射エックス線のエネルギーが必要なのです。
なお、「電子2個」を生成するためには、およそ1.02MeVのエネルギーが必要です。
(2)(3)(4)(5)は正しい。



問7 図のように、エックス線装置を用い、厚さ20mmの鋼板に管電圧100kVでエックス線を垂直に照射したとき、照射野の中心から2mの距離にある図のA点からD点における散乱線の空気カーマ率の大きさに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
ただし、鋼板からの散乱線以外の影響は考えないものとし、また、照射条件は一定とする。

(1)A点における空気カーマ率は、鋼板の厚さを30mmに替えると減少する。
(2)D点における空気カーマ率は、鋼板の厚さを30mmに替えても、ほとんど変化しない。
(3)A点における空気カーマ率は、B点における空気カーマ率より小さい。
(4)B点における空気カーマ率は、鋼板を同じ厚さのアルミニウム板に替えると減少する。
(5)C点における空気カーマ率は、D点における空気カーマ率より小さい。

問7図


答え(5)
(1)は誤り。A点の空気カーマ率は、鋼板の厚さを20mmから30mmに替えると「増加」します。鋼板を厚くすれば、後方散乱線の空気カーマ率(A点・B点)は増加し、前方散乱線(C点・D点)は減少します。
(2)は誤り。D点の空気カーマ率は、鋼板の厚さを20mmから30mmに替えると「減少」します。
(3)は誤り。A点の空気カーマ率は、B点の空気カーマ率より「大きく」なります。
(4)は誤り。B点の空気カーマ率は、鋼板を同じ厚さのアルミニウム板に替えると「増加」します。鋼板や鉛板よりもアルミニウム板の方が、後方散乱線の空気カーマ率は大きくなります。
(5)は正しい。散乱角90°のときに、空気カーマ率はもっとも小さくなります。



問8 管理区域を設定するための外部放射線の測定に関する次の文中の[  ]内に入れるAからCの数値又は語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。

「測定点の高さは、作業床面上約[ A ]mの位置とし、あらかじめ計算により求めた[ B ]の低い箇所から逐次高い箇所へと測定していく。
測定前に、バックグラウンド値を調査しておき、これを測定値[ C ]値を測定結果とする。」

(1)A:1  B:1cm線量当量           C:に加算した
(2)A:1  B:1cm線量当量又は70μm線量当量  C:から差し引いた
(3)A:1  B:1cm線量当量又は1cm線量当量率  C:から差し引いた
(4)A:1.5 B:1cm線量当量率          C:から差し引いた
(5)A:1.5 B:1cm線量当量率又は70μm線量当量 C:に加算した


答え(3)
測定点の高さは、作業床面上約1mの位置とします。座ったときに胸、立ったときにお腹あたりの位置で測定すると覚えましょう。
測定する際の留意事項として、あらかじめ計算により求めた1cm線量当量又は1cm線量当量率の低い箇所から逐次高い箇所へと測定していきます。
測定前に、バックグラウンド値(自然放射線量などの値)を調査しておき、これを測定値から差し引いた値を測定結果とします。



問9 エックス線装置を用いて透過写真撮影を行う場合のエックス線の遮へい及び散乱線の低減に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)遮へい体には、原子番号が大きく、密度の高い物質を用いるのがよい。
(2)コンクリートの遮へい体は、同程度の遮へい効果を得るために鉛の約2倍の厚さが必要であるが、後方散乱線を低減する効果が鉛より大きいため広く用いられている。
(3)照射筒は、照射口に取り付けるラッパ状の遮へい体で、エックス線束及び散乱線が外部へ漏えいしないようにするために用いる。
(4)ろ過板は、被写体からの後方散乱線の低減に効果がある。
(5)絞りは、エックス線束の広がりを制限し、エックス線を必要な部分にだけ照射するために用いる。


答え(2)
(2)は誤り。ある放射線源を遮へいする場合、コンクリートの遮へい体は、同程度の遮へい効果を得るために鉛の約9倍の厚さが必要になります(鉄であれば、鉛の約2.5倍の厚さが必要です。)。
また、コンクリートよりも鉛の方が、後方散乱線を低減する効果が大きいと考えられます。
(1)(3)(4)(5)は正しい。



問10 下図のようにエックス線装置を用いて鋼板の透過写真撮影を行うとき、エックス線管の焦点から4mの距離にあるP点における写真撮影中の1cm線量当量率は160μSv/hである。
この装置を使って、露出時間が1枚につき2分の写真を週300枚撮影するとき、P点の後方に遮へい体を設けることにより、エックス線管の焦点からP点の方向に8mの距離にあるQ点が管理区域の境界線上にあるようにすることができる遮へい体の厚さは次のうちどれか。
ただし、遮へい体の半価層は25mmとし、3か月は13週とする。

(1)10mm
(2)20mm
(3)30mm
(4)40mm
(5)50mm

問10図


答え(5)
この問題では、距離の逆2乗則と減弱の式を用いて、遮へい体の厚さを求めます。

まず、問題文で与えられている値から3か月の全照射時間を計算します。
なお、3か月単位にするのは、管理区域が1.3mSv/3か月を超えるおそれのある区域だからです。

照射時間=露出時間[min/枚]×週の撮影枚数[枚/週]×3か月の週数[週/3か月]
 =2[min/枚]×300[枚/週]×13[週/3か月]
 =7,800[min/3か月]

次の計算をしやすくするために、分単位から時間単位に直します。

7,800[min/3か月]÷60[min/h]=130[h/3か月]

この3か月の全照射時間にP点における写真撮影中の1cm線量当量率「160μSv/h」を掛けて3か月あたりの1cm線量当量率を求めます。

130[h/3か月]×160[μSv/h]=20,800[μSv/3か月]

次の計算をしやすくするために、μSv/3か月単位からmSv/3か月単位に直します。

20,800[μSv/3か月]÷1,000[μSv/mSv]=20.8[mSv/3か月]

続いて、距離の逆2乗則を用いて、焦点から8mの距離にあるQ点の3か月当りの1cm線量当量率を計算します。
なお、ここではQ点の3か月当りの1cm線量当量率をAとします。

A[mSv/3か月]/20.8[mSv/3か月]=42[m]/82[m]
A[mSv/3か月]=16[m]×20.8[mSv/3か月])/64[m]
A[mSv/3か月]=5.2[mSv/3か月]

続いて、今求めた「Q点の3か月当りの1cm線量当量率5.2mSv/3月」と「管理区域の境界の線量率1.3mSv/3月」、問題文ただし書きの「遮へい体の半価層は25mm」を、減弱の式に代入して、「エックス線管の焦点からP点の方向に8mの距離にあるQ点が管理区域の境界線上にあるようにすることのできる遮へい体の厚さ」を計算します。
なお、ここでは遮へい体の厚さをxとします。

1.3[mSv/3か月]=5.2[mSv/3か月] × (1/2)x[mm]/25[mm]
1.3[mSv/3か月]/5.2[mSv/3か月]=(1/2)x[mm]/25[mm]
1/4=(1/2)x[mm]/25[mm]
1/2×1/2=(1/2)x[mm]/25[mm]
(1/2)2=(1/2)x[mm]/25[mm]

左辺と右辺の指数の部分を抜き出すと次のようになります。

2=x[mm]/25[mm]
x[mm]=50[mm]

したがって、遮へい体の厚さは(5)50mmが正解です。


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