X線作業主任者の過去問の解説:測定(2018年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:測定(2018年4月)

ここでは、2018年(平成30年)4月公表の過去問のうち「エックス線の測定に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2018年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2018年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2018年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2018年4月)



問1 放射線の量とその単位に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)吸収線量は、電離放射線の照射により単位質量の物質に付与されたエネルギーであり、単位としてGyが用いられる。
(2)カーマは、電離放射線の照射により、単位質量の物質中に生成された荷電粒子の電荷の総和であり、単位としてGyが用いられる。
(3)等価線量は、人体の特定の組織・臓器当たりの吸収線量に、放射線の種類とエネルギーに応じて定められた放射線加重係数を乗じたもので、単位はSvが用いられる。
(4)実効線量は、人体の各組織・臓器が受けた等価線量に、各組織・臓器の相対的な放射線感受性を示す組織加重係数を乗じ、これらを合計したもので、単位としてSvが用いられる。
(5)eV(電子ボルト)は、放射線のエネルギーの単位として用いられ、1eVは約1.6×10-19Jに相当する。


答え(2)
(2)は誤り。『電荷』の総和ではありません。カーマは、単位質量の物質中に与えられた初期運動『エネルギー』の総和です。ちなみにカーマ(Kerma)は、「Kinetic energy released per unit mass」の頭文字から取られたものです。
(1)(3)(4)(5)は正しい。



問2 放射線防護のための被ばく線量の算定に関する次のAからDまでの記述について、正しいもののすべての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 眼の水晶体の等価線量は、放射線の種類及びエネルギーに応じて、1cm線量当量又は70μm線量当量のうち、いずれか適切なものにより算定する。
B 皮膚の等価線量は、エックス線については1cm線量当量により算定する。
C 外部被ばくによる実効線量は、1cm線量当量により算定する。
D 妊娠中の女性の腹部表面の等価線量は、腹・大腿(たい)部における70μm線量当量により算定する。

(1)A,B
(2)A,C
(3)A,C,D
(4)B,C,D
(5)B,D


答え(2)
A,Cは正しい。
Bは誤り。皮膚の等価線量は、エックス線については『70μm線量当量』により算定します。ちなみに、中性子線の場合は1cm線量当量により算定します。
Dは誤り。妊娠中の女性の腹部表面の等価線量は、腹・大腿部における『1cm線量当量』により算定します。



問3 放射線検出器とそれに関係の深い事項との組合せとして、正しいものは次のうちどれか。

(1)電離箱 ・・・・・・・・・・・ 電子なだれ
(2)比例計数管 ・・・・・・・・・ 窒息現象
(3)GM計数管 ・・・・・・・・・・ グロー曲線
(4)半導体検出器 ・・・・・・・・ 空乏層
(5)シンチレーション検出器 ・・・ G値


答え(4)
(1)は誤り。電離箱と関係の深い事項として、飽和領域、W値などがあります。
(2)は誤り。比例計数管と関係の深い事項として、電子なだれ、気体(ガス)増幅などがあります。
(3)は誤り。GM計数管と関係の深い事項として、窒息現象、電子なだれ、気体(ガス)増幅、プラトーなどがあります。なお、グロー曲線は熱ルミネセンス線量計と関係の深い事項です。
(4)は正しい。他に、半導体検出器と関係の深い事項として、電子・正孔対などがあります。
(5)は誤り。シンチレーション検出器と関係の深い事項として、蛍光作用、光電子増倍管があります。なお、G値はフリッケ線量計などの化学線量計と関係の深い事項です。



問4 GM計数管に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)GM計数管では、入射放射線によって生じる一次イオン対の量とは無関係に、ほぼ一定の大きさの出力パルスが得られる。
(2)GM計数管の電離気体としては、通常、アルゴンなどの希ガスが用いられる。
(3)GM計数管には、放射線によって生じる放電を短時間で消滅させるため、消滅ガスとしてアルコールなどの有機ガス又は臭素などのハロゲンガスが少量混入される。
(4)GM計数管では、入射放射線のエネルギーを分析することができる。
(5)GM計数管には、放射線が入射してもパルス信号が検出できない時間があり、これを不感時間という。


答え(4)
(4)は誤り。GM計数管では、入射放射線による放電とは無関係に、管内で紫外線が発生し放電が起こります。したがって、一次電離量とは無関係に一定の大きさの出力パルスが得られるのですが、入射放射線のエネルギーは分析することができません
(1)(2)(3)(5)は正しい。



問5 次のエックス線とその測定に用いるサーベイメータとの組合せのうち、不適切なものはどれか。

(1)10keV程度のエネルギーで、1mSv/h程度の線量率のエックス線
  ……… NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータ
(2)50~200keVのエネルギー範囲で、50μSv/h程度の線量率のエックス線
  ……… 電離箱式サーベイメータ
(3)100keV程度のエネルギーで、10μSv/h程度の線量率のエックス線
  ……… 半導体式サーベイメータ
(4)300keV程度のエネルギーで、100μSv/h程度の線量率のエックス線
  ……… GM計数管式サーベイメータ
(5)300keV程度のエネルギーで、10mSv/h程度の線量率のエックス線
  ……… 電離箱式サーベイメータ


答え(1)
(1)は不適切。NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータは、50keV以下の低エネルギーのエックス線の測定には不向きです。
(2)は正しい。電離箱式サーベイメータは、広いエネルギー範囲の測定に向いており、低線量率から高線量率まで測定できます。
(3)は正しい。半導体式サーベイメータは、30keV以下の低エネルギーのエックス線の測定には向いていませんが、低線量率の測定には向いています。
(4)は正しい。GM計数管式サーベイメータは、広いエネルギー範囲の測定に向いていますが、高線量率の測定には向いていません。
(5)は正しい。(2)の解答を参照してください。



問6 次のAからDまでの放射線測定器のうち、線量を読み取るための特別な装置を必要としないものの組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A フィルムバッジ
B 蛍光ガラス線量計
C PD型ポケット線量計
D 半導体式ポケット線量計

(1)A,B
(2)A,C
(3)A,D
(4)B,D
(5)C,D


答え(5)
Aは誤り。フィルムバッジは、線量を読み取るために、現像処理装置と濃度計が必要です。
Bは誤り。蛍光ガラス線量計は、専用のリーダーが必要です。
C,Dは、線量を読み取るための特別な装置を必要としないため、その場で線量を読み取ることができます。



問7 熱ルミネセンス線量計(TLD)と光刺激ルミネセンス線量計(OSLD)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)TLDでは素子としてフッ化リチウム、硫酸カルシウムなどが、OSLDでは炭素を添加した酸化アルミニウムなどが用いられている。
(2)TLD及びOSLDの素子は高感度であるが、TLDの素子は感度に若干のばらつきがある。
(3)線量読み取りのための発光は、TLDでは加熱により、OSLDでは緑色のレーザー光などの照射により行われる。
(4)OSLDでは線量の読み取りを繰り返し行うことができるが、TLDでは線量を読み取ると素子から情報が消失してしまうため、1回しか行うことができない。
(5)TLDでは加熱によるアニーリング処理を行うことにより素子を再使用することができるが、OSLDでは素子は1回しか使用することができない。


答え(5)
(5)は誤り。TLD、OSLDは、両方ともアニーリングにより素子を再使用することができます。
(1)(2)(3)(4)は正しい。



問8 放射線の測定の用語に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)半導体検出器において、放射線が半導体中で1個の電子・正孔対を作るのに必要な平均エネルギーをε値といい、シリコンの結晶の場合は約3.6eVである。
(2)GM計数管の動作特性曲線において、印加電圧を上げても計数率がほとんど変わらない範囲をプラトーといい、プラトー領域の印加電圧では、入射エックス線による一次電離量に比例した大きさの出力パルスが得られる。
(3)気体に放射線を照射したとき、1個のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値といい、気体の種類にあまり依存せず、放射線のエネルギーに応じてほぼ一定の値をとる。
(4)線量率計の積分回路の時定数は、線量率計の指示の即応性に関係した定数で、時定数の値を小さくすると、指示値の相対標準偏差は小さくなるが、応答速度は遅くなる。
(5)測定器の指針が安定せず、ゆらぐ現象をフェーディングという。


答え(1)
(1)は正しい。その通りです。
(2)は誤り。GM計数管では、入射エックス線による一次電離量に無関係に一定の大きさの出力パルスが得られます。
(3)は誤り。W値は、放射線のエネルギーにあまり依存せず、気体の種類に応じてほぼ一定の値をとります。
(4)は誤り。時定数の値を小さくすると、指示値の相対標準偏差は大きくなりますが、応答速度は速くなります。
(5)は誤り。フェーディングとは、積分型の測定器において、放射線が入射して作用した時点からの時間経過に応じて線量の読み取り値が減少していく現象をいいます。



問9 あるサーベイメータを用いて50秒間エックス線を測定し、3,200cpsの計数率を得た。
この計数率の標準偏差(cps)に最も近い値は、次のうちどれか。

(1)1
(2)8
(3)56
(4)64
(5)400


答え(2)
標準偏差とは、値のバラツキを表す指標の一つです。
たとえば、サーベイメータの計数値が0秒から1秒の1秒間では3,207だとしても、1秒から2秒の1秒間では3,191というようにバラツキが見られます。

それでは、なるべくわかりやすい解法で標準偏差を計算していきます。

まず、計数率の標準偏差(cps)を求めるに当たり、50秒間の計数値を求めます。

50[s]×3,200[cps]=160,000[c]

50秒間の計数値は、160,000cだと分かりました。
次に、50秒間の計数値の標準偏差を求めます。
サーベイメータを用いて放射線を測定した場合の計数値の標準偏差は、次の式で求められます。

標準偏差=√計数値

ここに先ほど求めた50秒間の計数値160,000cを代入すると次のようになります。

標準偏差=√160,000 [c]
 =400[c]

50秒間の計数値の標準偏差は、400cであることが分かりました。
求めたいのは、1秒間あたりの計数値の標準偏差、つまり計数率の標準偏差(cps)なので、400cを50sで割ります。

400[c]/50[s]=8[cps]

よって、この計数率の標準偏差(cps)は、(2)8が正解です。



問10 電離箱式サーベイメータを用い、積算1cm線量当量のレンジ(フルスケールは10μSv)を使用して、ある場所で、実効エネルギーが180keVのエックス線を測定したところ、フルスケールまで指針が振れるのに100秒かかった。
このときの1cm線量当量率に最も近い値は次のうちどれか。
ただし、測定に用いたこのサーベイメータの校正定数は、エックス線のエネルギーが120keVのときには0.85、250keVのときには0.98であり、このエネルギー範囲では、直線的に変化するものとする。

(1)310μSv/h
(2)330μSv/h
(3)360μSv/h
(4)400μSv/h
(5)450μSv/h


答え(2)
この問題は線量当量から線量当量率を求め、エックス線のエネルギーに応じた校正定数を掛けて真の線量当量率を計算するものです。

まず、選択肢と単位を合わせるために、秒sを時間hに直しましょう。

100[s]÷60[s/min]=100/60[min]
100/60[min]÷60[min/h]=100/3,600[h]
※割り切れない場合は、分数のまま計算した方が後の計算式がスッキリします。

次に、線量当量率を求めますが、線量当量を時間で割って求めることができます。

10[μSv]÷100/3,600[h]=360[μSv/h]

線量当量率は、360[μSv/h]だとわかりました。

続いて、「実効エネルギーが180keVのエックス線」の校正定数を求めます。
問題文のただし書きで、校正定数は「120keVのときには0.85」「250keVのときには0.98」とありますので、180keVのときの校正定数をkとし、比の計算を行います。

(250[keV]-180[keV]):(250[keV]-120[keV])=(0.98-k):(0.98-0.85)
※左辺はエックス線のエネルギーの比で、右辺は校正定数の比です。

(250[keV]-120[keV])×(0.98-k)=(250[keV]-180[keV])×(0.98-0.85)
※比の計算では内側同士、外側同士の掛け算になります。

130×(0.98-k)=70×0.13
127.4-130k=9.1
-130k=9.1-127.4
-130k=-118.3
k=0.91

これで180keVのときの校正定数kは、0.91だとわかりました。

最後に先ほど求めた線量当量率360μSv/hに、校正定数0.91を掛けて真の線量当量率を計算します。

360[μSv/h]×0.91=327.6[μSv/h]

したがって、最も近い値は(2)330μSv/hが正解です。


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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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