X線作業主任者の過去問の解説:管理(2018年4月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:管理(2018年4月)

ここでは、2018年(平成30年)4月公表の過去問のうち「エックス線の管理に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2018年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2018年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2018年4月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2018年4月)



問1 工業用エックス線装置のエックス線管及びエックス線の発生に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)エックス線管の内部には、効率的にエックス線を発生させるためにアルゴンなどの不活性ガスが封入されている。
(2)陽極のターゲットにタングステンが多く用いられる主な理由は、熱伝導率が高く、加工しやすいことである。
(3)陰極のフィラメント端子間の電圧は、フィラメント加熱用の降圧変圧器を用いて10~20V程度にしている。
(4)陽極のターゲット上のエックス線が発生する部分を実効焦点といい、これをエックス線束の利用方向から見たものを実焦点という。
(5)陽極のターゲットに衝突する電子の運動エネルギーがエックス線に変換する効率は、管電圧に比例し、ターゲット元素の原子番号に反比例する。


答え(3)
(1)は誤り。エックス線管の内部は、高度の真空状態となっています。もし内部にガスがあると、熱電子がターゲットに届くまでに、ガス分子が邪魔をしてしまいます。
(2)は誤り。タングステンが多く用いられる理由は高融点(約3,400℃)であることです。また、ターゲット元素にモリブデンが用いられることもありますが、こちらも高融点(約2,600℃)の金属元素です。
(3)は正しい。フィラメント電圧は、電源電圧より降圧します。
(4)は誤り。ターゲット上で熱電子がぶつかりエックス線が発生する部分を実焦点といいます。これをエックス線束の利用方向から見た部分を実効焦点といいます。
(5)は誤り。熱電子がエックス線に変換される効率(変換効率または発生効率)は、管電圧とターゲット元素の原子番号の積(掛け算)に比例します。



問2 エックス線装置について、次のAからDのように条件を変化させるとき、発生する連続エックス線の全強度を大きくするもののすべての組合せは(1)~(5)のうちどれか。

A 管電流は一定にして、管電圧を2倍にする。
B 管電圧は1/2にして、管電流を2倍にする。
C 管電圧は2倍にして、管電流を1/2にする。
D 管電圧及び管電流は一定にして、ターゲットを原子番号のより大きな元素にする。

(1)A,B
(2)A,B,D
(3)A,C,D
(4)B,C
(5)C,D


答え(3)
連続エックス線の全強度は、次の関係式で示されます。

I∝iV2Z

『∝』は『比例』を意味する記号ですので、『左辺と右辺は比例しています。』という意味になります。

なお、それぞれのアルファベットの意味は次のとおりです。
I:連続エックス線の全強度
i:管電流
V:管電圧
Z:ターゲット元素の原子番号

上記の関係式から、連続エックス線の全強度Iは、管電流iとターゲット元素の原子番号Zに比例し、管電圧Vの2乗に比例するのがわかります。
このことを踏まえて選択肢について考えると次のようになります。

Aは正しい。22で、全強度は4倍になります。
Bは誤り。(1/2)2×2で、全強度は1/2になります。
Cは正しい。22×1/2で、全強度は2倍になります。
Dは正しい。ターゲットを原子番号のより大きな元素にすると、全強度も大きくなります。



問3 特性エックス線に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

(1)特性エックス線の波長は、ターゲット元素の原子番号が大きくなると長くなる。
(2)特性エックス線は、連続スペクトルを示す。
(3)管電圧が、K系列の特性エックス線を発生させるのに必要な最小値であるK励起電圧を下回るときは、他の系列の特性エックス線も発生することはない。
(4)K殻電子が電離されたことにより特性エックス線が発生することを、オージェ効果という。
(5)ターゲット元素がタングステンの場合のK励起電圧は、タングステンより原子番号の小さい銅やモリブデンの場合に比べて高い。


答え(5)
(1)誤り。特性エックス線の波長は、ターゲット元素の原子番号が大きくなると短くなります。例えば、同じ系列の特性エックス線の波長は、原子番号42番のモリブデンは0.071nm、原子番号74番のタングステンは0.021nmです。
(2)誤り。特性エックス線は線スペクトルを示し、制動エックス線は連続スペクトルを示します。
(3)誤り。管電圧が、K励起電圧を下回るときでも、L系列など他の系列の特性エックス線が発生することがあります。
(4)誤り。オージェ効果では特性エックス線が発生する代わりに、外殻電子(オージェ電子)が飛び出します。
(5)は正しい。原子番号の大きい元素の方が、励起電圧は高くなります。K励起電圧は、原子番号42番のモリブデンは20.0kVで、原子番号74番のタングステンは69.5kVです。



問4 エックス線と物質との相互作用に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)光電効果とは、原子の軌道電子がエックス線光子のエネルギーを吸収して原子の外に飛び出し、光子が消滅する現象である。
(2)光電効果が起こる確率は、エックス線のエネルギーが高くなるほど低下する。
(3)光電効果により原子から放出される電子を反跳電子という。
(4)コンプトン効果とは、エックス線光子と原子の軌道電子とが衝突し、電子が原子の外に飛び出し、光子が運動の方向を変える現象である。
(5)コンプトン効果による散乱エックス線は、入射エックス線のエネルギーが高くなるほど前方に散乱されやすくなる。


答え(3)
(3)は誤り。光電効果により原子から電子が放出されますが、これを『光電子』といいます。なお、『反跳電子』は、コンプトン効果により外に飛び出した電子です。
(1)(2)(4)(5)は正しい。



問5 単一エネルギーで太い線束のエックス線が吸収体を通過するときの減弱を表す場合に用いられる再生係数(ビルドアップ係数)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)再生係数は、1未満となることはない。
(2)再生係数は、線束の広がりが大きいほど大きくなる。
(3)再生係数は、入射エックス線のエネルギーや吸収体の材質によって異なる。
(4)再生係数は、吸収体の厚さが厚くなるほど大きくなる。
(5)再生係数は、入射エックス線の線量率が大きいほど大きくなる。


答え(5)
(5)は誤り。再生係数は、線量率に依存しません。
(1)(2)(3)(4)は正しい。



問6 エックス線を利用する装置とその原理との組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。

(1)エックス線応力測定装置 ……………… 回折
(2)エックス線CT装置 ……………………… 回折
(3)蛍光エックス線分析装置 ……………… 分光
(4)エックス線マイクロアナライザー …… 分光
(5)エックス線厚さ計 ……………………… 散乱


答え(2)
(2)エックス線CT装置は、透過の原理を利用した装置です。
(1)(3)(4)(5)は正しい。



問7 エックス線を鋼板に照射したときの散乱線に関する次の文中の[  ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。

「前方散乱線の空気カーマ率は、散乱角が大きくなるに従って[ A ]し、また、鋼板の板厚が増すに従って[ B ]する。
後方散乱線の空気カーマ率は、エックス線装置の影になるような位置を除き、散乱角が大きくなるに従って[ C ]する。」

(1)A:増加 B:増加 C:増加
(2)A:増加 B:減少 C:増加
(3)A:増加 B:減少 C:減少
(4)A:減少 B:増加 C:減少
(5)A:減少 B:減少 C:増加


答え(5)
鋼板などの物体にエックス線を照射すると、コンプトン効果などの相互作用が起こり、散乱線は全方向に発生します。
エックス線装置から物体に対してエックス線を照射したとき、物体の向こう側に散乱するエックス線を前方散乱線といいます。
反対に、物体の手前側(エックス線装置側)に散乱するエックス線を後方散乱線といいます。
前方散乱線は散乱角が大きくなると『減少』しますが、後方散乱線は散乱角が大きくなると『増加』します。
また、物体の厚さが増すと、前方散乱線は『減少』しますが、後方散乱線は増加して、ある程度の厚さになると一定になります。



問8 管理区域を設定するための外部放射線の測定に関する次の文中の[  ]内に入れるAからCの語句の組合せとして、正しいものは(1)~(5)のうちどれか。

「測定箇所は、壁等の構造物によって区切られた[ A ]を含むものとし、測定点の高さは、作業床面上約1mの位置として、事前に計算により求めた1cm線量当量率の[ B ]へと測定を行っていく。
なお、あらかじめバックグラウンド値を調査しておき、測定結果はバックグラウンド値を[ C ]値とする。」

(1)A:領域の中央部   B:高い箇所から逐次低い箇所 C:差し引いた
(2)A:領域の中央部   B:低い箇所から逐次高い箇所 C:加えた
(3)A:境界の近辺の箇所 B:高い箇所から逐次低い箇所 C:差し引いた
(4)A:境界の近辺の箇所 B:低い箇所から逐次高い箇所 C:差し引いた
(5)A:境界の近辺の箇所 B:低い箇所から逐次高い箇所 C:加えた


答え(4)
測定箇所は、壁等の構造物によって区切られた『境界の近辺の箇所』を含むものとします。
例えば、管理区域がひとつの部屋であれば、その部屋の壁や扉の外側も含めて測定します。
測定は、事前に計算により求めた1cm線量当量率の『低い箇所から逐次高い箇所』へと測定を行っていきます。
これは、測定者の被ばくを低減するための措置です。
なお、あらかじめバックグラウンド値を調査しておき、測定結果はバックグラウンド値を『差し引いた値』とします。
バックグラウンド値とは、自然放射線などの影響による本来測定したい線量とは別の線量のことです。



問9 あるエネルギーのエックス線に対する鉛の質量減弱係数が0.2cm2/gであるとき、このエックス線に対する鉛の1/10価層に最も近い厚さは次のうちどれか。
ただし、鉛の密度は11.4g/cm3とし、loge2=0.69、loge5=1.61とする。

(1)0.5mm
(2) 1mm
(3) 2mm
(4) 5mm
(5) 10mm


答え(5)
問題文にはlog(対数)がありますが、今回はlog(対数)を使わない計算を行います。
この問題で必要な公式は、次のとおりです。

①減弱係数[cm-1]=質量減弱係数[cm2/g]×密度[g/cm3]
②半価層[cm]=0.69/減弱係数[cm-1]
③1/10価層[cm]=半価層[cm]×3.3

まず①の公式を使って鉛の減弱係数を求めます。

減弱係数[cm-1]=0.2[cm2/g]×11.4[g/cm3]
減弱係数[cm-1]=2.28[cm-1]

続いて、②の公式を使って鉛の半価層を求めます。

半価層[cm]=0.69/2.28[cm-1]
半価層[cm]≒0.3[cm]

最後に、③の公式を使って鉛の1/10価層を求めます。

1/10価層[cm]=0.3[cm]×3.3
1/10価層[cm]=0.99[cm]

これを選択肢と同じmm単位に直します。

0.99[cm]×10[mm/cm]=9.9[mm]

したがって、1/10価層に最も近い厚さは(5)10mmが正解です。



問10 下図のように、エックス線装置を用いて鋼板の透過写真撮影を行うとき、エックス線管の焦点から3mの距離のP点における写真撮影中の1cm線量当量率は0.2mSv/hである。
エックス線管の焦点とP点を結ぶ直線上で、焦点からP点の方向に15mの距離にあるQ点を管理区域の境界の外側になるようにすることができる1週間当たりの撮影可能な写真の枚数として、最大のものは(1)~(5)のうちどれか。
ただし、露出時間は1枚の撮影について2分間であり、3か月は13週とする。

問10図

(1) 75枚/週
(2)240枚/週
(3)290枚/週
(4)375枚/週
(5)430枚/週


答え(4)
この問題は、図のQ点が管理区域の境界線の外側にあるとき、1週間当たりの撮影可能な写真の最大枚数を求めるものです。
なお、管理区域とは、3か月あたり1.3mSvを超えるおそれのある区域です。

まず、週の撮影枚数をNとし、3か月当たりの全撮影時間を計算します。

全撮影時間=1枚当たりの露出時間×週の撮影枚数×3か月の週数
 =120/3,600[h/枚]×N[枚/週]×13[週/3か月]
 =(1,560/3,600)N[h/3か月]

割り切れない場合は、分数のまま計算した方が式がスッキリします。

次に、P点における3か月当たりの線量当量を計算します。

線量当量=線量当量率×全撮影時間
 =0.2[mSv/h]×(1,560/3,600)N[h/3か月]
 =(312/3,600)N[mSv/3か月]

それでは、逆2乗則を使って、週の撮影枚数Nを求めましょう。
逆2乗則は、強度が距離の2乗に反比例して減少する法則なので、次のような計算式で表されます。

強度(P点)/強度(Q点)=距離(Q点)2/距離(P点)2

(312/3,600)N[mSv/3か月]/1.3[mSv/3か月]=152[m]/32[m]
312N/1.3×3,600=225/9
312N=225×1.3×3,600/9
312N=117,000
N=117,000/312
N=375

したがって、Q点を管理区域の境界の外側になる1週間当たりの撮影可能な写真の最大枚数は、(4)375枚/週です。


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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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