X線作業主任者の過去問の解説:測定(2019年10月) | エックス線作業主任者 講習会・通信講座

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X線作業主任者の過去問の解説:測定(2019年10月)

ここでは、2019年(令和元年)10月公表の過去問のうち「エックス線の測定に関する知識(問1~問10)」について解説いたします。

それぞれの科目の解説は、下記ページからどうぞ。

X線作業主任者の過去問の解説:管理(2019年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:法令(2019年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:測定(2019年10月)
X線作業主任者の過去問の解説:生体(2019年10月)



問1 放射線に関連した量とその単位の組合せとして、誤っているものは次のうちどれか。

(1)吸収線量 …………… Gy
(2)線減弱係数 ………… m-1
(3)カーマ ……………… Gy
(4)LET ………………… eV
(5)等価線量 …………… Sv


答え(4)
(1)は正しい。吸収線量の単位は、J・kg-1で特別な名称としてGyが用いられます。
(2)は正しい。線減弱係数の単位は、長さの単位の逆数になりますのでm-1やcm-1などが用いられます。
(3)は正しい。カーマの単位は、J・kg-1で特別な名称としてGyが用いられます。
(4)は誤り。LETは、「Linear Energy Transfer」の頭文字で、荷電粒子の飛跡に沿って単位長さあたりに与えられるエネルギーを表します。その単位は、keV/μmやJ/mが用いられます。
(5)は正しい。等価線量の単位は、J・kg-1で特別な名称としてSvが用いられます。



問2 エックス線の測定に用いるNaI(Tl)シンチレーション検出器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)シンチレータとして用いられるヨウ化ナトリウム結晶は、微量のタリウムを含有させて活性化されている。
(2)シンチレータにエックス線が入射すると、可視領域の減衰時間の短い光が放射される。
(3)シンチレータから放射された光は、光電子増倍管の光電面で光電子に変換され、増倍された後、電流パルスとして出力される。
(4)光電子増倍管から得られる出力パルス波高は、入射エックス線の線量率に比例する。
(5)光電子増倍管の増倍率は、印加電圧に依存するので、光電子増倍管に印加する高圧電源は安定化する必要がある。


答え(4)
(4)は誤り。光電子増倍管から得られる出力パルス波高は、入射エックス線の「エネルギー」に比例します。
これによりシンチレーション検出器では、入射エックス線が何keVかというエネルギー分析ができます。
(1)(2)(3)(5)は正しい。



問3 男性の放射線業務従事者が、エックス線装置を用い、肩から大腿(たい)部までを覆う防護衣を着用して放射線業務を行った。
労働安全衛生関係法令に基づき、胸部(防護衣の下)、頭・頸(けい)部及び手指の計3箇所に、放射線測定器を装着して、被ばく線量を測定した結果は、次の表のとおりであった。

問3図

この業務に従事した間に受けた外部被ばくによる実効線量の算定値に最も近いものは、(1)~(5)のうちどれか。
ただし、防護衣の中は均等被ばくとみなし、外部被ばくによる実効線量(HEE)は、その評価に用いる線量当量についての測定値から次の式により算出するものとする。

HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
Ha:「頭・頸部」における線量当量
Hb:「胸・上腕部」における線量当量
Hc:「腹・大腿部」における線量当量
Hm:「頭・頸部」、「胸・上腕部」又は「腹・大腿部」のうち被ばくが最大となる部位における線量当量

(1)0.1mSv
(2)0.2mSv
(3)0.3mSv
(4)0.4mSv
(5)0.5mSv


答え(3)

この問題は、測定結果から「外部被ばくによる実効線量」を算定するものです。
もし全身に均等に被ばくする場合は、基本装着部位(男性は胸部、女性は腹部)に個人被ばく線量計を装着し、そこで測定した1cm線量当量を、外部被ばくによる実効線量とします。
しかし、今回は各部位で測定値が異なる不均等被ばくです。
このような場合の外部被ばくによる実効線量は次の式で算出できます。

HEE=0.08Ha+0.44Hb+0.45Hc+0.03Hm
HEE:外部被ばくによる実効線量
Ha:頭・頸部における1cm線量当量
Hb:胸・上腕部における1cm線量当量
Hc:腹・大腿部における1cm線量当量
Hm:「頭・頸部」「胸・上腕部」「腹・大腿部」のうち外部被ばくによる実効線量が最大となるおそれのある部位における1cm線量当量

臓器・組織ごとに放射線リスクが異なるため、上記の式では、各部位で異なる係数を掛けることになっています。
また、各部位の1cm線量当量は、それぞれの部位に装着した個人被ばく線量計の測定値を用いることが原則ですが、測定されていない場合は、他の部位のうち最大の1cm線量当量を該当部位の1cm線量当量とします。
または、線量不明の部位にもっとも近い部位に装着された線量計による1cm線量当量と同程度であることが明らかな場合には、その近接部位の1cm線量当量を用います。
問題文では「防護衣の中は均等被ばくとみなす」とありますので、胸部と腹・大腿部の測定値は同程度となり、Hcには0.2を用います。
それぞれの値を代入して、外部被ばくによる実効線量を求めます。

HEE = 0.08×1.0 + 0.44×0.2 + 0.45×0.2 + 0.03×1.0
  = 0.288 ≒ 0.3mSv



問4 被ばく線量を測定するための放射線測定器に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)電離箱式PD型ポケット線量計は、充電により先端がY字状に開いた石英繊維が放射線の入射により閉じてくることを利用した線量計である。
(2)蛍光ガラス線量計は、放射線により生成された蛍光中心に緑色のレーザー光を当て、発生する蛍光を測定することにより、線量を読み取る。
(3)光刺激ルミネセンス(OSL)線量計は、輝尽性蛍光を利用した線量計で、素子には炭素添加酸化アルミニウムなどが用いられている。
(4)半導体式ポケット線量計は、固体内での放射線の電離作用を利用した線量計で、検出器にはPN接合型シリコン半導体が用いられている。
(5)電荷蓄積式(DIS)線量計は、電荷を蓄積する不揮発性メモリ素子(MOSFETトランジスタ)を電離箱の構成要素の一部とした線量計で、線量の読み取りは専用のリーダを用いて行う。


答え(2)
(2)は誤り。蛍光ガラス線量計は、放射線を受けた素子に「紫外線」を当て、発生する蛍光を測定することにより、線量を読み取ります。
(1)(3)(4)(5)は正しい。



問5 放射線の測定の用語に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)放射線が気体中で1個のイオン対を作るのに必要な平均エネルギーをW値といい、放射線の種類やエネルギーにあまり依存せず、気体の種類に応じてほぼ一定の値をとる。
(2)放射線が半導体中で1個の電子・正孔対を作るのに必要なエネルギーをG値といい、100eV程度である。
(3)放射線計測において、測定しようとする放射線以外の、自然又は人工線源からの放射線を、バックグラウンド放射線という。
(4)GM計数管の特性曲線において、印加電圧の変動が計数率にほとんど影響を与えない平坦(たん)部をプラトーといい、プラトーが長く、傾斜が小さいほど、計数管としての性能は良い。
(5)計測器がより高位の標準器又は基準器によって次々と校正され、国家標準につながる経路が確立されていることをトレーサビリティといい、放射線測定器の校正は、トレーサビリティが明確な基準測定器又は基準線源を用いて行う必要がある。


答え(2)
(2)は誤り。放射線が半導体中で1個の電子・正孔対を作るのに必要なエネルギーを「ε値(イプシロンち)」といい、シリコン結晶の場合3.6eV程度です。
ちなみに、G値とは、化学線量計に用いられている物質が、100eVの放射線エネルギーを吸収したときに変化する分子数を表す値です。
(1)(3)(4)(5)は正しい。



問6 次のエックス線とその測定に用いるサーベイメータとの組合せのうち、不適切なものはどれか。

(1)10keV程度のエネルギーで、1mSv/h程度の線量率のエックス線
 ……………………… NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータ
(2)50~200keVのエネルギー範囲で、50μSv/h程度の線量率のエックス線
 ……………………… 電離箱式サーベイメータ
(3)100keV程度のエネルギーで、10μSv/h程度の線量率のエックス線
 ……………………… 半導体式サーベイメータ
(4)300keV程度のエネルギーで、100μSv/h程度の線量率のエックス線
 ……………………… GM計数管式サーベイメータ
(5)300keV程度のエネルギーで、10mSv/h程度の線量率のエックス線
 ……………………… 電離箱式サーベイメータ


答え(1)
(1)は不適切。NaI(Tl)シンチレーション式サーベイメータは、およそ100keV以下の低エネルギーのエックス線の測定には不向きです。
また、1mSv/h程度の線量率の測定にも向いているとは言えません。
この線質の場合は、電離箱式サーベイメータを用いるのが適切と考えられます。
サーベイメータの特徴や適応性に関する問題は、ほぼ毎回出題されていますので確実に正解できるように学習しましょう。
(2)(3)(4)(5)は正しい。



問7 積分回路の時定数Τ秒のサーベイメータを用いて線量を測定し、計数率n(cps)を得たとき、計数率の標準偏差σ(cps)は、次の式で示される。

問7図1

あるサーベイメータを用いて、時定数を3秒に設定し、エックス線を測定したところ、指示値は150(cps)を示した。
このとき、計数率の相対標準偏差に最も近い値は次のうちどれか。

(1)1%
(2)2%
(3)3%
(4)5%
(5)10%


答え(3)
標準偏差σ(シグマ)は、値のバラツキを表す指標です。
また、相対標準偏差は、バラツキの程度を表す指標で、標準偏差σを元の平均値(ここでは指示値)で割り、100を掛けて百分率で表したものです。

問7図2

上式に、問題文の指示値150(cps)と時定数3秒を代入します。

問7図3

したがって、(3)3%が正解です。



問8 放射線検出器とそれに関係の深い事項との組合せとして、正しいものは次のうちどれか。

(1)電離箱 ………………………… 窒息現象
(2)比例計数管 …………………… グロー曲線
(3)GM計数管 ……………………… 電子なだれ
(4)半導体検出器 ………………… ラジオフォトルミネセンス
(5)化学線量計 …………………… ε値


答え(3)
(1)は誤り。電離箱と関係の深い事項として、飽和領域、W値などがあります。なお、窒息現象は、GM計数管と関係の深い事項です。
(2)は誤り。比例計数管と関係の深い事項として、電子なだれ、ガス増幅などがあります。なお、グロー曲線は、熱ルミネセンス線量計と関係の深い事項です。
(3)は正しい。GM計数管と関係の深い事項として、電子なだれ、ガス増幅、窒息現象、プラトーなどがあります。
(4)は誤り。半導体検出器と関係の深い事項として、空乏層、ε値などがあります。なお、ラジオフォトルミネセンスは、蛍光ガラス線量計と関係の深い事項です。
(5)は誤り。化学線量計と関係の深い事項として、G値があります。なお、ε値は、半導体検出器と関係の深い事項です。



問9 エックス線の測定に用いるGM計数管に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1)GM計数管では、出力パルスの電圧が他の検出器に比べ、格段に大きいという特徴がある。
(2)GM計数管の不感時間は、100~200μs程度である。
(3)GM計数管では、入射放射線のエネルギーを分析することはできない。
(4)GM計数管では、入射する放射線が非常に多くなると、弁別レベル以下の放電が連続し、出力パルスが得られなくなる現象が起こる。
(5)GM計数管は、プラトー部分の中心部から少し高い印加電圧で使用する。


答え(5)
(5)は誤り。GM計数管は、内部ガスの劣化を遅らせるため、プラトー部分の中央部から少し「低い」印加電圧で使用します。
(1)(2)(3)(4)は正しい。



問10 GM計数管式サーベイメータにより放射線を測定し、700cpsの計数率を得た。
GM計数管の分解時間が100μsであるとき、真の計数率に最も近いものは、(1)~(5)のうちどれか。

(1)670cps
(2)690cps
(3)710cps
(4)750cps
(5)800cps


答え(4)
GM計数管式サーベイメータを用いて測定を行うと、分解時間内に数え落しが起こり、真の計数率(本当の計数率)と異なる値を示します。
真の計数率を求める公式は次の通りです。

M=m/(1-mt)

Mは真の計数率を、mは実測の計数率を、tは分解時間を表します。
それでは、問題文の数値を公式に代入して、計算していきましょう。

分解時間の100μsを、秒に直すと0.0001sです。

M=700[cps]/(1-700[cps]×0.0001[s])≒753[cps]

真の計数率は、約753cpsだとわかりました。
したがって、選択肢の中で最も近い値は(4)750cpsです。


講師のご紹介

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はじめまして。講師の奥田真史です。エックス線作業主任者の講習会・通信講座なら私にお任せ下さい!
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